平日の出勤時間よりも早いペースで、日本橋にて東京メトロ東西線から銀座線に乗り換える。銀座線の車内では、台湾のお坊さんの集団が瞑想するかのように静かに座っていた。
渋谷で東急東横線―みなとみらい線に乗り換え、横浜のみなとみらいへ。海辺にでんと横たわるパシフィコ横浜展示会場が・・・
ダライ・ラマ法王 横浜法話・講演
の会場だ。前回予告した通り、2週連続でダライ・ラマ14世猊下のお話を拝聴する。今回は午前の部・午後の部2回に分けて10:00~16:00という長丁場の法話・講演会だ。
10:00。司会・進行役の進藤晶子さんの紹介のあいさつで、ダライ・ラマ法王がご入場。万雷の拍手で出迎えられる。
午前の部は仏教法話「20世紀までは科学・技術の発展が重視されたが、それだけでは人の心を育むことができない、ということに皆気づき始めた※1。今の時代は心を高めることが重視されるようになり、その上で宗教が重要な役割を果たすことになる」という話をされた後、ツォンカパ(チベット仏教ゲルク派の創始者)の「縁起賛と発菩提心」について解説された(詳しい内容は省略――と言うか・・・今の私には書けないT_T)。
休憩を挟んで13:00。法王様のお話第2部――の前に、世界各国のお坊さんたちによる声明(しょうみょう)・お祈りが行われた。
インド
いでたちが仏教っぽくなく、声明の声の響きもインドそのものなのだが、何を言っているか分からない言葉の内容を聞けばきっと仏教なのだろう。
中華民国・台湾
って・・・
今度は私の中で確立されている仏教のイメージぴったりの声明・お祈りだった。
韓国
こちらも、スタイルは極めてオーソドックス。
客席の応援団の人数・熱気の方が印象に残っていたりする。
モンゴル
こちらは音楽の披露。歌手の方がモンゴルのガンタン寺で法王様にお会いした時等の映像を流しながら2曲演奏してくれた。
チベット
これもオーソドックスな声明・お祈りだったが、チベット語だったのでダライ・ラマ法王も一緒に唱えられていたのが印象に残った。
日本
激しい和太鼓のリズムに合わせてシャープに唱えられる般若心経!!
あんなに熱い般若心経は初めてだ――日本仏教のともすれば暗いイメージを完全に覆してくれたぞ。
渡辺貞夫
高校時代ブラスバンドでアルトサックスをやっていた私にとっては嬉しいサプライズだったが・・・
なぜ、ナベサダ?※2
なぜ、サックス?
14:00。今度こそ法王様のお話第2部が始まった。
今回は比較的平易な内容なので、チベット語ではなく英語で話し始めるが、どうしたことか、第1部ほどの勢いが感じられない。心なしか、声もかすれて聞こえる。
[1週間で3回の講演というタイトなスケジュールでお疲れなのかな? 今回は更にロングランの講演だし・・・]
などと思っていたところ、法王様は最初の一節が終わるとすぐに
「今回は(同時通訳機による)英語の通訳もあることなので、ここからはチベット語で」
とお断りを入れ、そこから先はチベット語でお話しされた。
すると・・・
復 活(笑)
いつもの法王様が戻ってきた。
その後は、
「心の平和を保てば体が健康になり、幸せや家族の平和も導かれる」
「全ての幸せの源は愛と思いやり」
「親の愛情を受けずに育った子供は、心の奥で他の人を信じられなくなる」
「以前は『私たち』『わが国』と『彼ら』『他の国』との間にバリアのようなものがあったが、国と国とが依存し合う今、自国のことばかり考えている訳にはいかない。『一つの人間家族』という意識が必要だ」
と、いつものように「愛」「利他」などをテーマにした内容をいつもの明調子でお話になった。
法王様がお元気だと聴衆も元気だ。最後の質疑応答にはいつもにも増して多くの人々が並び、日本人以外の姿も目立った。法王様が時間を30分延長してできる限り多くの方が質問できるようの計らってくださったが、それでも並んだ全員が質問、とはいかなかった。
講演、質疑応答を通じて少し印象的だったのが、ダライ・ラマ法王が
「仏教は『学ぶ』ことが重要。例えば般若心経も、唱えるだけでは駄目で、どのような意味なのかを学ぶところまで要求される」
と繰り返しおっしゃっていたことだった。そろそろ私も、本腰で仏教を「学ぶ」ことをしてみるかな。
16:30。講演終了。開始時と同じく、拍手に送られて法王様がステージを後にする。
いつもながら、ダライ・ラマ法王のお話を拝聴していると穏やかで温かな心になることができる。
ここ数年で、私の心は以前よりも穏やかに、でありながら強くなり、なお且つゆとりができてきたように何となく思われる(自画自賛?)のだが、2007年のダラムサラ以来、法王様の講演、法話を6度に亘って拝聴してきたことと無関係ではあるまい。
一つだけ、今回の講演で残念なことがあった。
「写真撮影はご遠慮ください」と主催者のお断りがあったにもかかわらず、写メを撮る連中が少なからずいたことである。特にひどかったのは、午前の部、午後の部各回の冒頭で報道関係者の方の撮影タイムが設けられたのだが、どさくさに紛れて一般の方が大勢前の方に出てきて写メを撮っていた一幕があったことだ。午後の部ではついに、進行役の進藤さんが「お写真はご遠慮ください」と皆に呼び掛けたのだが、それでも写メを撮る者は後を絶たなかった。
著名人の講演やコンサートでの写真撮影や録音はしない、というのは常識的な最低限のマナーではないのか? お心の広いダライ・ラマ法王だからまだよかったが、気難しいアーティストだったりしたら「もう日本には来ない」ということにもなりかねない。
私もカメラをやるので、撮りたい気持ちは理解できる。しかし、そこはTPOをわきまえて自重していただきたかった。
いや、カメラをやるからこそ、そう思うのである。