バス憧れの大地へ

世界への旅(旅行記)

アジア周遊第6部 北インド

ダラムサラ-5 ~ティーチング1日目

2007年9月3日

前夜の胃痛を引きずりながらも、手持ちの胃薬で何とか抑え、ダライ・ラマ14世によるティーチングに挑む。

昨日までは全くフリーで入ることのできたツクラカンが、この日は全く様相を異にしていた。入り口にはチベット人、外国人を中心に大勢の人が並び、入場の際にはパスを提示の上、セキュリティーチェックを受ける。通訳を聞くためのFMラジオは持ち込みOKだが、カメラや録音機は持ち込み禁止となっている。
入場したところで、ダライ・ラマ邸とツクラカンを結ぶ通路の両側に人々が並んでいる。 ダライ・ラマ14世 と、その通路を付き人たちを伴って、チベット仏教のトップであり、チベット人のリーダーであり、ノーベル平和賞受賞者であるダライ・ラマ14世が拍手に迎えられて通って行った。

あの方が…ダライ・ラマ14世か

柔和で穏やかそうな老人である。しかし、さすがは全世界のチベット人を導くリーダーだ。力強ささえ感じさせるオーラを放っていて、圧倒的な存在感がある。

前日場所取りした所へ行くが、先客がその上に座っている。昨日の苦労は全くの徒労に終わっていた。

9時。法王が入場し、午前の部のティーチングが始まる。しかし、ダライ・ラマと同じスペースでお話を拝聴できるのは一部の信者だけで、私たち外国人は法王の姿が見えない外側に座してお声だけを拝聴する形になった。
力強く、よく通る声だ。その一方で、その語り口調には穏やかさと温かさも感じられ、時折ジョークも交えて皆を笑わせたりもする。
今回は外国人、特に東南アジアの人々を対象にしており、ティーチングはおおむね英語で語られた。私の今の英語力ではなかなか聞き取ることができない。それでも、英語の鍛錬にと、そして法王の言葉を生でかみしめたいという思いから、必死で食らいついていった。
第1回の主なテーマは仏教の「ブッダ・ダルマ」に関することだったようである。専門知識も欠けている私には益々訳が分からない。何とか「怒りや嫌悪を乗り越え、心の平安を抱くことが大切」などといった内容を断片的に聞き取ることぐらいはできた。

11時。午前の部終了。退場していくダライ・ラマが、再び私の目の前を通り過ぎていく。
先日デリーの国立ガンディー博物館で、厳しい表情をしたガンディーの写真の数々を前に、「いくら非暴力主義者とはいえ、ガンディーも独立のために闘う"闘士"だったのだ」との印象を受けた。彼を尊敬するというダライ・ラマもまた、チベット自立の問題等で“闘う”人であるはずなのだが、それ以前に、やはり彼はチベット仏教のトップに立つ人物である。その表情、立ち居振る舞いには、無限の温かさ、穏やかさ ――  一言で言えば“慈悲”とでもなるのだろうか ―― が滲み出ていた。

この日は午後の部もあったが、私は胃痛の後遺症で体に力が入らず、残念ながらこの回は参加を見合わせた。

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