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雑記ブログ

「聖地チベット展」最終日をチベット人と参観(2)

さて、「聖地チベット展」参観後の懇親会。時間ぎりぎりで到着してみたら私たちが最後だった。
「あれ? 人数増えてる?」
と、よく見たら、赤い袈裟を着たお坊さんたちが加わっていた。そう言えば展覧会会場で、口を何かでふさぎながら(なぜ口をふさいでいたかということについてはこちらの記事をご参照ください)参観していたお姿をお見かけした。
「ブータンの一番大きなお寺のお坊さんだそうですよ」
と、今回の主催者が言う。会場で見た時はチベット人かと思ったが、ブータン人だったか。ブータンの方とお会いするのはこれが初めてのことだった。
お坊さんたちは食事が終わったらすぐに引き揚げたが、私たちは食後が本番だ。「聖地チベット展」の感想を話し合う。

今回参加してくださったチベット人は、
・Around 30?の男性。インド・ダラムサラの亡命社会出身。
・Around 20の女性。中国支配下の“チベット自治区”出身。
の2人。チベット人以外にも、チベットを知り尽くした作家・渡辺一枝さんらが参加された。

男性の方は2度目の参観だったが、2度目となる今回は前回にも増して時間をかけたという(それより遅れた私たちって、一体・・・)。
彼の感想は
悔しい、悲しい
ということだった。
まず、このブログでも既に何度か書いてきたことだが、仏様が丸裸で展示されていたことが悲しかったという。
それ以外にも、
仏像があるのに、お坊さんがいなかった
並べ方がめちゃめちゃだった
展示の冒頭がソンツェン・ガムポのことから始まっていたけれど、チベットはいきなりソンツェン・ガムポから始まったのではない。チベットの歴史も仏教も、ソンツェン・ガムポより前からあったのです
「中国からお妃を迎えたソンツェン・ガムポを最初にもってくることで、中国と結び付けたかったのでしょうね」(一枝さん)
などと、悔しさをにじませながら語ってくれた。

女の子の方は、日本に来た経緯について話題が集中しがちだったが、その中で誰かが、
「今回見た仏像の中で、本土で見たことがあるものってありましたか?」
と彼女に尋ねた。彼女は「うーん・・・」と首をかしげる。と、一枝さんがこう言った。
「仏像の前に立ったことがあったとしても、見ていないかもね。チベットでは仏様の顔をまじまじと見たりしないから
――そう。
そこも「聖地チベット展」の問題の一つなのだ。
日本でも仏教徒なら仏様の前では手を合わせて頭を下げるが、チベットでは仏様のお顔を見ることすら避けるのである。
然るに、この展覧会では、展示する方は仏様を美術品としてしか扱わず、見る方もそれにまんまとはまって、仏様を展示品として、好奇の対象としてまじまじとガン見してしまう。そこにはやはり、信仰の対象に対する敬意が欠如してしまっている。

チベット展に対する印象のほか、亡命社会で育ったチベット人と中国支配下のチベット本土で育ったチベット人との微妙な差も感じられた。
例えば、
「こんな会に参加して大丈夫?」
「日本にも中国の公安が少なからず紛れ込んでいるようだけど、怖くない?」
と聞かれた本土出身の女の子は
「怖いです」
と認める。試しに私は、亡命社会出身の男性に「あなたはどうですか?」と振ってみたが、
「そういうことは全然ないです」
との答えだった。

思えば、私の知り合いのチベット人は、これまでほとんどが亡命社会出身者で、本土出身のチベット人と話したことは殆ど無かった。
今後は本土出身のチベット人と知り合いになることもあるだろうが、そうした微妙な差を考えつつ接する必要があるかもしれない。

同展に対するチベットの方の考え方を聞くことができたのも貴重だったが、今回は「チベットの方との親交」そのものが大きな収穫だった。男性の方とは既知の仲であるが、これまでよりも何倍も彼を「チベット人として」感じることができた。

そして、一番強く感じたことは、
チベット人の方に心が向いていないチベット支援などあり得ない。自己満足だけでやっているのならそんなものはチベット支援ではない
ということの再認識だった。至極当たり前のことだが、一番大切なことである。

自分がチベット支援をする上での大きな指標を確認できた思いだった。

     チベット人と共に・・・
     チベットと共に・・・


2 thoughts on “「聖地チベット展」最終日をチベット人と参観(2)

  1. >「チベット人の方に心が向いていないチベット支援などあり得ない。
    >自己満足だけでやっているのならそんなものはチベット支援ではない」

    おつかれさまでした。
    全面的に賛同します。
    渡辺先生も同じように感じていらっしゃるようでした。
    チベットのためにできること、そして基本的人権を
    守るためにやるべきこと。それは非暴力を貫く法王さまが
    体現なさっています。

  2. 月夜野さん

    ご賛同ありがとうございます。
    チベットを訪れ、チベットの方々と交流している月夜野さんなら尚更、そう感じることでしょうね。

    我々とてチベット人ではないのでその苦難は想像もつきません。
    今年は、昨年以上にチベットの方々と交流し、その思いを少しでも理解し、共感できる年にしたいと思っています。

         チベット人と共に・・・
         チベットと共に・・・

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