ロヴァニエミ-1 ~サンタクロース村
2017年12月31日
前日夕刻にヘルシンキを出発した列車「サンタクロース号」は、午前7時半前、フィンランド北部に位置するラップランドのロヴァニエミに到着した。
北緯60度にもなるこの地の冬は、日照時間が極めて短い。この時間になっても空は漆黒である。そして、列車が北に向かうにつれて車窓の景色に雪が見えるようになっていたが、ロヴァニエミに着いてみると実に10㎝ほどの積雪になっていた。
闇と雪景色に包まれたロヴァニエミ駅それでも取りあえずはバックパックを下ろしたいと思い、私は闇と雪の中、宿のある街中へと歩いた。しかし、目指す宿は看板を出していないようで、住所のあたりを探しても一向に見つからない。仕方がないのでバックパックを背負ったままその次の目的地に移動することにした私は、歩いて駅に戻った。
ちょうど「その次の目的地」に向かうバスが駅のそばに待機していた。それに乗り込んで運賃を支払うが、フィンランドは典型的なキャッシュレス社会。乗合バスまでクレジットカード対応だった。
バスは8時15分にロヴァニエミ駅を出発し、30分ほどで目的地に出発。しかし開園時間が9時で、少しばかり外で待たされた。
サンタクロース村入り口行き着いた場所は、サンタクロース村だ。
サンタクロースの住み家についてはいろいろな地にいろいろな説があるが、その一つがラップランドに住んでいるというもの。そこで、フィンランドのラップランドの地にこの施設が造られたということらしい。
9時になって門が開き、レセプション棟に入場した。中にはレセプション、売店のほか、サンタの像やプレゼントを積んだそりなどが置かれている。
「ここから先が北極圏」を表す線
と、床に線が引かれていているのが目に入った。線には「66°33′07″」と書かれている。
この数字、「北緯66度33分7秒」を表していて、66度33分は北極圏・南極圏の限界線に当たる。即ち、「ここから先が北極圏ですよ」ということに他ならない。
「サンタクロースは北極圏に住んでいる」という言い伝えから、この場所にサンタクロース村を造ったということなのだろうが、実は村の主な施設はこの建物の南側に集中しているので、厳密に言うとこの村の大部分は北極圏外だということになる。
それにしても、私の住んでいる場所がだいたい北緯35度30分あたりなので、緯度にして31度も離れた場所に来たということになる。これまで私が訪れた最北端は満洲の黒河(北緯50度15分)で、最南端はペルーのプーノ(南緯15度50分)なので、緯度差の記録はまだまだ遠いものの、訪れた北限という点では大きく更新したことになる――いやそれより、北極圏まで来てしまったということそのものの方が重大なことなのかもしれない。
レセプション棟から外に出る。園内の気温計によると、この時の気温は-3度。まだ空が暗い上に一面の銀世界なので寒い寒いと感じていたが、実際にはそれ程でもなかったようだ。
表に出た正面にはいかにもサンタクロースが住んでいそうな三角屋根の木造の建物が鎮座していた。この中に、サンタクロース?と会って一緒に写真が撮れるサンタクロース・オフィスがある。
サンタクロース・オフィスのある建物写真を受け取るにはプリントアウトした静止画を30ユーロで、静止画と動画の電子データを40ユーロで購入しなければならない。決して安いものではないが、ここまで来てこれをやらずに帰るのも面白くない。それに、この施設は入場無料なのだから、入場料代わりにここで30ユーロ払ってもいいのではないか――私はそう考えて、写真撮影の列に並ぶことにした。
撮影待ちの列は、多くの日本人も含めてかなりの長さになっていて、私に順番が回ってくるまで20分ほどかかった。
そして、2階の部屋に通されると、そこには赤いとんがり帽子と白髪・白髭の太った老人がいた。服こそその名からという言葉からイメージされる赤づくめではなく、白いシャツと緑のズボンに赤いちゃんちゃんこのような上着だったが、そこにいたのは紛れもなくサンタクロースだった(と思うようにしよう)。
「コンニチハー!」
サンタクロースは私を日本語で迎えてくれた。がっしりとした腕と大きな手が私の肩に回されたが、その腕から伝わってきたのは力強さではなく、温かさと優しさだった。
サンタクロースと記念写真「アリガトー♪」
サンタクロースは人懐こい笑顔で私を見送ってくれた。
出口で30ユーロを支払い、A4版の写真を受け取る。高い買い物だが、いい記念になった。
サンタクロース村ではこの他にも、郵便局があって絵葉書を自分や家族・友人知人に送るという楽しみ方もある(なのに私は住所録を持たないで行ってしまっていた)。すぐに到着するように送ることもできるし、クリスマスに届くように指定することもできる。
サンタクロース村郵便局
きらびやかな電飾と樹氷
表に出ると、まだほの暗い中で電飾が施されていて、樹氷に覆われた木々も美しく照らし出されている。樹氷はこの地の厳しい寒さを表すものに他ならないのだが、このサンタクロース村ではそれすらもメルヘンチックな雰囲気の元にしてしまうような空気があった。
そう、サンタクロースというのは究極的なメルヘンの化身だ。ここにいると老若男女、人種・国籍、文化・信仰の分け隔て無く、誰もがメルヘンの世界の中で童心に帰ることができるだろう。
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