デリー-1 ~混沌再び…オールド・デリーとガンディー詣で
2015年5月6日
夜中の便でスリランカの最大都市コロンボからインドへ。往路と同じようにムンバイを経由して、インドの首都空港であるデリーのインディラ・ガンディー空港に到着したのは午前4時半。エアポート・メトロの始発がそろそろ出る頃ではあったが、まだちょっと早いような気がしたし、機内での睡眠時間が短すぎたので、託送のバックパックを受け取ったところで、他の数人のインド人がそうしていたように、手荷物受取所近くのベンチで少し仮眠を取ることにした。
2時間ほど休憩して、税関を抜けて外に出る。デリー滞在はこの日1日限りで夕方にはまた空港に戻ってくるので、第3ターミナルの手荷物預り所にバックパックを預け、エアポート・メトロに乗っていざ、デリー市中へと繰り出す。
ニューデリー駅前
空港からエアポート・メトロの終点のニューデリー駅までは僅か20分。下車して地上に出ると、朝の7時半という早い時間にもかかわらず、そこには既にインドらしい「混沌」が目覚めていた。人が、車がひっきりなしに往来し、けたたましい音が鳴り響いている。
[この混沌を体いっぱいに受けて歩きたい…]
インド入国は既に4度目となり、私にとってインドの混沌は既にカルチャーショックではなくなっていた。むしろ、この空気の中へ積極的に身を投じたい衝動に駆られていた。
次の目的地まで3、4km。大した距離ではないし、既に場所も分かっている。私はその目的地まで、雑踏の中を歩いて行くことにした。
オールド・デリーの街を貫く、先ほど見た駅前の広い道の半分もない狭い路地を歩く。道行く人、自動車、バイク、リキシャ、犬 ―― 道端では少しずつだがシャッターを開ける商店 ―― 狭い中にもインドの人々の営みがエネルギッシュに展開されている。
オールド・デリーの街並みとジャマー・マスジット
やがて目の前に、丸屋根の白いドームが見えてきた。17世紀創建のイスラム教のモスクであるジャマー・マスジットだ。もう少し南に出るイメージだったが、手持ちの地図が貧弱だったこともあってちょっとずれてしまった。ジャマー・マスジットを過ぎて大通りに出たところで南へと軌道修正することにした。
その大通りの西側歩道では、市が立っていた ―― いや、市と言うよりも、個人の行商者が勝手に集まって、品物を道端に並べて売っているような雰囲気だった。歩道では収まりきらず、車道にまでせり出しているので、道行く自動車やリキシャやバスなどと接触しそうである。
道端で開かれていた“市”
これもまた、インドらしい、大らかな光景だ。
そのまま大通りを南下して、デリー門のある交差点で左折。更にその先の大きな交差点の向こうにあるのが、ラージ・ガート ―― インド解放の偉人マハトマ・ガンディーが荼毘に付された場所である。前回のデリー訪問でも訪れた場所だが、ガンディーを尊敬する私にとって、ここは毎回訪れて然るべき墓参の地だ。
広場中央の黒大理石の記念碑の傍らでは、今日もガンディーの葬儀の日以来燃え続けている炎が赤々と輝いている。この炎はきっと、ガンディーの魂そのものなのだろう。
中東を中心とする世界がきな臭くなりつつある昨今 ―― 今こそガンディーの「非暴力主義」をあらためて見つめ直したい。
ラージ・ガート
ガンディー博物館
そして、交差点の向かい側にあるガンディー博物館へ。こちらも2007年、2011年に続いて実に3度目の訪問となる。展示物はいつ見ても同じなのだが、来る度に「ガンディー主義」に対する思いを新たにさせられる。ラージ・ガート同様、今後もデリーを訪れたら欠かさず来ることになるだろう。
先ほど歩いてきた道を再び、ジャマー・マスジットが見えるあたりまで戻る。ジャマー・マスジットは「以前訪れたからまあいいか」で済ませてしまったが、その先にある、ムガル帝国時代の城であるラール・キラー(レッド・フォート)は、やはり訪問済みにもかかわらず何故かまた訪れたい気がして、チケット売り場で釣り銭を誤魔化そうとした係員と一悶着ありながらもチケットを買って入場した。
ラール・キラー(レッド・フォート)
前回の旅行記を読み返してみると、「外から見ると重厚、中から見ると敷地が広い割には(イギリスとの戦いで破壊されて)建物が少なくて散漫」などという印象を受けていたようだが、今回は何故か余り考えずに巡り歩いて、ムガル帝国の往時の繁栄ぶりを想像し、ムガル建築の重厚さと緻密さという相反する2つの要素に素直に感心することができた。
ここまで巡り歩いてきた場所は、いずれも私の旅心を満たしてくれたが、実は今回のデリー訪問で一番の目当てはこれらの場所ではなかった。「なぜこれまでの訪問できちんと訪れていなかったのだ?」という場所があり、今回は是が非でもその場所をきちんと訪れたい考えていたのだ。
オールド・デリーの混沌とした薫り、ガンディー、ラール・キラー ―― 大物たちを「前座」に回して、私は今回の「本命」に向けて再び足を動かした。
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