フンザ-2 ~「風の谷」と流星
2007年8月12日
朝、雨が止むのを待ってジャンキー宿を立ち去り、すぐ近くのHaidar Innに移る。
ここは健全で明るい雰囲気だ。談話室にもなっている食堂には日本人のほか、韓国人、中国人(香港人?)、ポーランド人もいて国際色豊か。日本語・韓国語・広東語の相互学習も始まり、和やかに時が進む。
上から見たフンザ川の谷
昼前から、フンザ川の谷を目指す。谷とはいってもそんなに深くなく、カリマバードから川のすぐそばまで道路も通じている。しかし、実際に歩いてみると上から見て感じていた以上に川辺は遠かった。
白濁したフンザ川を右手に、下流に向かって川原を歩いてみた。時折、心地よい風が吹いてくる。
♪ラン ランララ ランランラン ラン ランララ ラーン
ふとこんなハミングが聞こえるような気がしてくる。実はこのフンザ、宮崎駿アニメの傑作「風の谷のナウシカ」のモデルになっているとも言われる地域なのだ。
フンザ川の谷 「風の谷」には見られない真っ白な雪山や大きな川があるなど、違いを言い出せば限が無い。とはいえ谷間にそよぐ風を体に感じていると、なるほど、ここが「風の谷」だと言われても何の違和感も無いように思われてくる。
川は猛々しく、左右の壁はごつごつとした岩だ。しかし、遠目に見える雪山は対照的に、どことなく優しげで、人々を見守っているようにも思われる。
暫く歩くと川が左向きに大きく蛇行するポイントに着いた。ここで川原は分厚い岩壁にさえぎられ、そこから先へは歩けなくなった。私はそこで引き返し、適当な所で谷の上に上がった。
川辺から離れてしまうと、谷の荒々しさはもう殆ど感じられず、全体的な風景の美しさばかりが際立つ。
自然というものは、近づいてみて初めて、その厳しさ・荒々しさを実感できるものである。遠目には美しく"優しさ"すら感じられるあの雪山も、近くに寄れば全く逆の、力強さ・迫力といった形で存在感を見せつけてくるに相違ない。
上がった場所はカリマバードからはやや離れた場所だった。またしても飲料水を切らしてしまった私は、少し歩いた所に売店を見つけ、清涼飲料水を買って一息つく。さて行くか、と歩き出したところで、通りすがりのワゴン車が止まって、「乗って行くかい?」と声をかけてきた。まだ体の中が乾いている感じだったのでありがたく乗せてもらい、ゼロポイントで下り際に「幾ら?」と尋ねると「いらないよ」との答え。こういうところがパキスタン人の良さである。
夕方、フンザに来て初めて電気が復旧した。宿の上にあるインターネットカフェでで存分にインターネットをする。
メールをチェックすると、チベット、ネパールで一緒だったヨージからメールがあった。
「ネットでパキスタン全土に大統領が非常事態宣言出すとかださんとかってチラッと見ましたが....
行くなら気をつけてくださいね♪」
メールの日付は、私がパキスタン入りした翌日の、2日前。そんな騒ぎになっているとは全く知らなかったし、そんな騒ぎになっている様子でもなかったので、飛び上がるほど驚いた。慌ててニュースをチェックしてみると、
「パキスタン 非常事態宣言回避」
とのこと。ひとまずほっとした。
こうして普通に旅ができていたから忘れていたが、パキスタンはまだまだ不安定な情勢なのだ。今後の旅も心して続けなければならない。
さて、夕食時である。
Haidar Innでも夕食は宿で皆一緒に取る方式だったが、この日は明るい電灯の下で食べることができた。いや、明るいのは電灯だけではない。雰囲気も、昨日の宿とは雲泥の差でとても明るく、いい気分で夕食のひと時を過ごすことができた。
フンザの星空。この日は流れ星も多く見られた
この日は夜にも楽しみが待っていた。ちょうどペルセウス座流星群の日だったのである。
22時すぎまで曇っていたが、次第に雲が散り、天の川がくっきりと見えるようになった。フンザで知り合った仲間たちと宿の屋上でいざ、天体観測である。
これまで南モンゴルで、チベット・ギャンツェで印象的な星空を見てきたが、ここフンザでの星空は破格だった。その主役はやはり、流星。大小数十個の光の筋が星空を彩る。但し、文字通り「あっ」という間に消えてしまので、「星に願いを」といったかどうかはかなり怪しい。
地球上の山や谷に加え、地球の外の自然現象にまで触れることのできた、印象深い一日となった。
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