ニャラム ~ミラレパ修行洞と緑豊かな渓谷
2007年7月21日
ラルン峠(恐らく)
幹線道路に入れば道も良くなるだろうと思っていたが、確かにチョモランマ(エベレスト)・ベースキャンプからの道に比べれば幾分いいものの、それでも目の前に続いていたのは未舗装の道路だった。
オールド・ティンリーを出発してから2時間ほど山を上ったところで、峠(恐らくラルン峠)に到着した。もはやすっかり見慣れてしまったタルチョのほか、石を積み上げた塚のようなものがある。周囲を見ると、大小さまざまなそうした塚が幾つも立てられている。
この峠からも、天気が良ければヒマラヤ山脈が見えるはずなのだが、相変わらずいまいましい雲が視界を阻んでいる。
海抜5000m超のこの峠を越えると、後は下るばかりだ。同3800mのニャラムへ、一気に1200mもの高低差を下りて行く。
途中、一時雨が降るが、ある地点に達した瞬間、雨が突然やんだばかりでなく、地面に雨が降った痕跡すら見当たらなくなるという不思議な出来事があった。
「これがチベットですよ」
ガイド氏のお決まりの一言が飛び出した。
ニャラム手前で通行止め
さて、ニャラムまであと10km少し、というところで通行止めがあり、車がずらりと並んでいる。
事情は予め知らされていた。ここからダムへと続く道路は当時、明るい間は工事をしていて、夜間でないと通行することができなかったのだ。
「何で昼間に工事で夜に通行なんだ? 普通逆じゃないか?」
皆でそう言い合ったが、その理由は数時間後、明らかになることになる。
待ち時間は4時間ほど。どうやって時間を潰そうかと考えていたところ、「ミラレパ修行洞」と書かれた看板が目に入った。10世紀初頭にミラレパという名僧が修行したといわれる、ニャラム周辺で唯一の見どころなのだが、思いがけずこのすぐ近くにあったのだ。
早速谷の下へと向かう階段を下りて行ってみた。すぐに谷の壁面にへばり付くように建てられた堂が見えてきたが、何やら周りで工事をしているようである。嫌な予感はしたが、近づいてみるとやはり中には入れなかった。
恐らく今回のチベット巡りで最後の名所となろうミラレパ修行洞に入場できなかったことは残念だったが、そこへ向かう途中の階段から見えた、緑豊かな渓谷の風景だけでも、十分に満足することができた。荒野の多いチベットにあってこれだけ深い緑を見たのはどれだけ振りだろう。
ミラレパ修行洞
緑豊かな渓谷の風景
後は近くの売店でインスタント麺を食べたり、カイラス巡りを終えてインド人グループと一緒にネパールを目指しているという日本人と少しばかり話をしたりして過ごす。
そして20時前、交通規制が解除され、ずらりと並んだ車が1台1台、先へと進んでいく。
私たちの車も、ダムへ向けて出発した。しかしその先で私たちを待っていたのは、今回の旅で一番肝を冷やした道程だった。
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