ミンヨン(明永)-1 ~氷河への道
注:ジョルとは、徳欽の名で知られている街で、現状中国雲南省に属しているが本来チベットの版図に属する。
2007年6月16日
氷河を訪れることにしていたこの日の朝、エドワードが私とチムのいる部屋にやって来た。
「氷河へ行く道だけど、土砂崩れで塞がれたっていう話だよ。もしかしたら行くのは難しいかもしれない」
本当だとしたら残念だが、取りあえず行ってみることにした。エドワード(オランダ)、チム(タイ)、カズ(日本)、そしてエドワードのガールフレンド・キキ(中国)の、それぞれ国籍の違う4人でワゴンタクシーをチャーターし、ジョルから昨日訪れた飛来寺のわきを通り、ディチュ河の上流へと向かう。
ザナチュ(メコン川)に架かるカワカブ橋手前のゲートに到着。ここで道路の状況を聞いてみたところ、問題なく通ることができるという。ガセネタに惑わされて訪問を中止しないで、本当によかった。
ミンヨン村から少しだけ見えた雪山
ゲートをくぐって橋を渡り、暫く山道を上ったところで、ミンヨン(明永)の村に到着した。ここで腹ごしらえをして、いざ、4か国混合での氷河行きに出陣だ。
村の中を流れる小川を渡ったところが登山道の入り口である。小川の上流に目を向けると、昨日は全く見えなかった雪山の山肌がほんの少しだけ見えた。
登山道には2つのコースがあった。楽に歩けるが時間がかかる道と、傾斜はきついが短時間で行ける道 ―― 私たちは全員一致で後者のコースを選んだ。
初めのうちこそ4人まとまって歩いていたが、やがてエドワード、私、チム、キキの順番でばらけてしまった。
今回の旅だけでも既に幾つもの山を歩いた私にとって、傾斜そのものはそれ程大したものではなかったのだが、出発発地点のミンヨン村の時点で既に標高2000mという高地である。呼吸が少々苦しい。コースの途中一部にある木製の桟道が何ともありがたかった。
やがて、中国名で「太子廟」と呼ばれる祠に辿り着く。ここの標高は2900m。そんなに登った自覚は無いのだが、スタートから既に900mも登っていたのだ。
祠の裏手に回ると、タルチョの向こうの山肌に、何やらゴツゴツとしたものが見える。
[間違いない。あれが氷河だ!]
ほんの少しだけ、気分的に元気になった。
タルチョの向こうに氷河が見えた
眼下に見える氷河
それから木々に囲まれた山道を少し歩いていくと、エドワードが立ち止まって谷の方に目を落としている。彼は追いついてきた私に気がつくと、「お疲れ。いい脚してるね!」と、笑顔を見せる。
私はエドワードの隣に立ち、彼と同じように木々の間から谷の方に視線を落としてみた。
眼下には、ゴツゴツとした分厚い、岩のようにも見える氷の河があった。
「これが氷河か ―― 初めて見るよ」
「そうなんだ。僕は北欧で見たことがある」
そんな素っ気ない言葉の内容とは裏腹に、彼もまた私同様、間近に見るミンヨンの氷河に興奮気味であることは様子を見ればよく分かる。
遊歩道はまだ先がある。再びエドワードが先行し、私がそれに続く形でその終点へと足を進め始めた。
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