東京・市ヶ谷のJICA地球広場で開かれた、チベットの山に関する講演会に行ってきました。
今回の講演は、東チベットのカワカブ(カワ・カルポ、中国語で『梅里雪山』と呼ばれる山系の主峰)で遭難した、私の大学時代の友人を含む登山隊(詳細はこちら)の遺骨・遺品の捜索を続ける小林尚礼さんを中心に開かれたもの。ゲストに、チベットを自転車で駆け巡ってきた安東浩正さんを迎えてW講演が行われました。
まずは、小林さん。シャクナゲやサボテンの花などで彩られた美しいカワカブの写真の数々を見せていただきました。
実は、私もカワカブの見えるはずの場所に行ったことがあるのですが、折悪く雨季で山の姿は見られずじまい。小林さんの写真は何度も見させていただいてその度に「もう一度行って、今度こそカワカブの雄姿をこの目で見たい」と思わされるのですが、今回の講演ではそれを上回る別の「見に行きたい」の思いにかられることになります。
それが、安東さんの講演のテーマとなったカイラス(カン・リンポチェ)。西チベットにそびえる、チベット仏教とは勿論のこと、ポン教やヒンドゥー教の信者にも神聖視されている聖山です。
前半は、雲南留学中にラサから冬の東チベットを自転車で横断して麗江、大理、昆明に抜けたという驚愕のエピソードを語っていただきました。後半は、やはり自転車でウイグルのカシュガルから西チベットのアリを経由してカイラスに辿り着き、周囲を巡礼したエピソードなども語って頂きました。カイラス巡礼のコツや宿の場所なども語っていただき、いつかカイラスへ行く時が来れば必ずや役立つであろう知識を得ることができました。
もう一つ興味深かったのは、高山病を予防するコツでした。
「呼吸する時は、ゆっくりと息を吐くことはしない。息を吐いて肺が縮む時間を極力短くする」
「チベット鉄道に乗る場合は、ゴルムドを過ぎた先の最大の山越えの際に寝ることはしない。起きて高地順応に努めること」
「ゆっくり歩く」
「荷物は軽く」
などなど。なるほど。これもチベット再訪やカイラス行きの時に必ずや役立つ知識になるだろう。
カイラスは私にとって憧れの地。しかし人里離れた場所にあり、行くには困難を伴うまさに秘境。よしんば到着できても、4500mもの高地を歩いて巡礼しなければならないのでそこで更に苦労が待っている。
しかし、そんなカイラスにも変化が起きているようだ。
舗装こそされていないものの、自動車で走ることができる道ができているという。
インド人がカイラス巡礼路の中でもとりわけ厳しい難所にロープウェイを造ろうとしているという。
神とあがめる山を巡礼するのに横着をしてどうする? やはりカイラスの巡礼路は自分の足で歩いてナンボだろう。
「カイラスは、今はまだ“秘境”と呼べます」
安東さんが言う。確かに、今ならまだ間に合う。何としてもカイラスが“秘境”と呼べる間に巡礼を実現させたいものだ。