「普遍的管轄権」という言葉をご存じだろうか。私はつい最近になって初めて知った。
国際法によれば、国家は、国際法上の犯罪の加害者を訴追することが可能であり、場合によってはそれを要求されている。この管轄権は、どこで、いつ犯罪が起きたかに関わらず、また被疑者あるいは被害者の国籍に関わらず、また、法廷が設置されている国に何か特別な関係、例えば当該国家の安全保障など、があるかどうかに関係なく存在する。
普遍的管轄権は、国際法上もっとも重大な犯罪として、ジェノサイド、人道に対する罪、戦争犯罪、拷問、超法規的処刑および「失踪」に適用される。国内法の犯罪である、殺人、誘拐、暗殺および強かんなどにも同様に適用される。(アムネスティの資料より)
これまでに、ピノチェト事件(後述)で普遍的管轄権によってチリのピノチェト元大統領がスペインでの判決に基づきイギリスで逮捕された例や、グァテマラの虐殺や拷問に対しスペイン憲法裁判所が普遍的管轄権を認めた例があり、日本でも日本の法輪功愛好者が中国大使館と江沢民・前中国国家主席らに対し集団虐殺罪と名誉棄損で損害賠償を求めて大阪地裁に訴えたことがあった(これは却下された)。
先日、ロンドン在住の日本人チベットサポーターのWさんから興味深い情報が流れてきた。
またもスペインで、チベットの虐殺・拷問の問題で最高裁が中国法務部代表8人に判決を通達したというのである。(これが、私が『普遍的管轄権』という言葉を初めて知ったきっかけだった)
以下、WさんからTSNJメーリングリスト経由で送られてきた内容を引用。
スペイン最高裁の裁判官はチベット自治区党,張慶黎書記長を含む、中国法務部代表8人に最高裁決定を通達した。決定は2008年3月以降続いているチベット人に対する厳しい取り締まりに関し、チベットの人々に対する犯罪についての調査を懸案事項に含む。
裁判官は中国外務省に対して、もしスペイン国内の裁判所での被告人に対する質問が拒否された場合には、中国国内で行われることができるよう許可の申請をした。
Santiago Pedraz裁判官はまた、チベット内の刑務所と抗議行動の起こった主要地を視察する許可を申請し、インド政府にもダライラマと亡命政府の拠点であるダラムサラでチベット人目撃者に証言をとる許可も申請。この訴訟は現在スペイン最高裁判所で” 普遍的管轄権” に基づき現在進行中の2つのチベットに関する訴訟のうちの一つで、これによって最高裁はテロや戦争犯罪、拷問の関連が認められた場合には国境を越えてアクセスが可能になる。
特に昨年の武力鎮圧を含む、2006年以降に関するこの訴訟はTibet Support Committee of Spain (CAT) と Fundacion Casa Del Tibet, Barcelona(バルセロナ、チベットハウスファンデーション)から起こされ北京オリンピックの開幕わずか数日前に、裁判所に受理された。
Judge Pedraz裁判官は中国当局に、 AFP通信社 (May 5, 2009)によって指摘され提出された、今訴訟に関する裁判の参考書類によると、2005年に中国はスペインと二国間の司法協力協定に署名したことについて指摘し”私たちのそれぞれの二国間の友好関係を考え,私の要求に対して良い回答をしてくれることを望む”と書面で発表。
裁判官はさらに、これらの告訴内容が実証されれば、人道侵害の罪でスペイン法と国際法の両方で裁かれることになると発言。
”チベット住民は政治的、民族的、文化的、宗教的、国際法のしたで世界的に認められないとされているその他の動機などによって迫害されてるグループのように見えるだろう”と同氏は、書いたとAFP通信の報道。
裁判所によって公表された判決内容では Pedraz裁判官は”現在訴訟手続きの経過で調査中である、チベットの人々に対する人道侵害の犯罪の関与”について” 中国の指導者を質問することの必要性を強調.
また同様の書面の中で訴訟に関する書類のコピーが同封されている事にふれて”スペインの刑事法
と刑法775に乗っ取って弁護する権利を行使するためには、
もし被告人がこの(スペインの)最高裁でそうするのを拒否した際には、中国国内にて中国法務部から中国への被告人質問を行う司法許可を得るため、
スペイン国内で連絡が可能な指定されたアドレスをもつことが必要です。”と
ある。起訴状によると8名の中国当局関係者、被告人の中には以下の3名も含まれている。
●- チベット自治州チベット自治省の共産党書記Zhang Qingli(張慶黎)
ダライラマに対する悪意に満ちた声明や、チベットにおける愛国教育のキャンペーンなどで知られ、チベットにおいて反感や不安を招いたとされる。●- 新疆自治区ウイグル自治区トップの共産党委員会書記、
ウイグルの人々に対して、一連の強硬政策の指揮をとった
中国共産党中央政治局Wang Lequan(王楽泉)●- 前中国少数民族?外交流教会会長、チベットを含む中国の西部地域全体の経済政策の指導計画の実施にしていた Li Dezhu(李匇洙)
今回の訴訟の指揮を執ったのは、
Jose Elias Esteve Moltoバレンシア大学国際法学科教授と、Alan Cantos のSpanish Tibet Support Committee(スペインチベット支援委員会)で海洋学の研究者は、今回の訴訟についてこう語った。「我々は国際法を用いてチベットの人々に正義を求めると同時に、中国政府指導者に対してはっきりと責任をとうことの出来る方法を調査しました。現段階ではまだわかりませんが、起訴された中国指導者らの証言要求に従うことが彼等によって拒否された場合には、スペインと犯罪者引渡条約を結ぶ国の国内で、彼等を逮捕することができます。これはインターポール(国際刑事警察機構)による規約であり、個々の政府によるものとは関係なく施行されるものです。
ICT広報担当官で今回の裁判にも、スペインに出向いて証言資料等の提出をしたケイト サンダーズの語る所では、
スペインにはチリの独裁者ピノシェ(ピノチェト)逮捕を可能にした裁判官Baltasar Garzonなど参加する『Group of Progressive Persecuters』という司法家の団体があります。
裁判官Baltasar Garzonはピノシェの” 普遍的管轄権” の行使を可能にしたパイオニアで、1998年にインターポールを通した国際逮捕状の発布により、治療目的でロンドンを訪れたピノシェを逮捕に至リました。この件に関してはアムネスティとメディカルファンデーションがピノシェのスペイン最高裁出頭に対して、かなり運動をしましたね。
今回のチベットに関する裁判を担当しているSantiago Pedraz裁判官も、その『Group of Progressive Persecuters』のメンバーの一人で、今回の訴訟の指揮を執った、Jose Elias Esteve Moltoバレンシア大学国際法学科教授と、Alan Cantos の二人は自国の法の枠を越えて普遍的な人道に関する罪を” 普遍的管轄権” の行使によって可能にすることこそが、ダライラマの説く「中道」アプローチだと共感し、10年の歳月をかけて訴訟を起こしました。
現在スペインではチベットに関する2つの個別の訴訟が起こされています。
一つが、この記事に関する去年3月動乱以降に関するもの。
と、もう一つは過去50年にさかのぼって、チベットにおける中国の「人道に関する罪」を問うものです。(労働改造所への強制収容、漢族との通婚の強制などを含む)
なお、2006年9月30日に起きたナンパラ峠での少年・尼僧射殺事件についても、現在準備中だそうです。この国際法によるアプローチの優位性は、国際法というインターポールを通した刑の行使によって個々の国の法律を乗り越えことを可能にする点です。
ロンドンでピノシェを逮捕可能にしたように、スペインと犯罪者引渡条約を結ぶ国の国内で、起訴された8人の中国人被告人を逮捕することも可能になります。これに触発されて、様々な国で現在話し合いが始められているようです。
日本でもどのような運動の可能性があるかなど、模索してみたいですね。
日本がスペインとどのような司法協定をもっているか、今回のスペイン最高裁決定に関して、今後どのような運動することが可能かなどについて、日本の司法家でご協力、アドバイスをいただける方、是非とも、ご連絡下さい。
スペインは日本と司法共助条約を結んでいる(参照:外務省公式サイト『スペイン王国』)。その内容によっては上述の被告の身柄を日本からスペインに引き渡すことも可能な訳だ。
「インターポール(国際刑事警察機構)による規約であり、個々の政府によるものとは関係なく施行されるものです」ということだから、つまり、中国の顔色ばかり窺っている腰ぬけ日本政府がどう思おうとインターポールの権限によって施行できるということである。
いずれにせよ、今後の動きに注目。面白いことになるかもしれない。
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