春。
過ごしやすくなるのはありがたいが、
春になると、
富士山が見えにくくなる。
昨年、神奈川県内のある富士山絶景ポイントを2度訪れたが、まだ富士山を見るには至っていない。
4月3日、そのポイントも富士山もいい天気予報が出ているので、三たび行ってみることにした。
その場所は、
丹沢山系・塔ノ岳。
自宅のある川崎から、朝6時前からJR南武線、小田急小田原線を乗り継いで、渋沢駅へ、そこからバスで行った大倉バス停が、登山のスタート地点だ。
塔ノ岳へのルートは、大倉尾根(俗称『バカ尾根』)を通る最短ルートと、鍋割山を経由していくルートがある。私はこれまで両方のルートを登ったことがあるが、実は大倉発でもう一つ、知る人ぞ知るルートがある。
それは、「小丸尾根ルート」。途中までは鍋割山ルートと同じだが、二俣を過ぎたところで、ショートカットになる小丸尾根を辿って登るルートだ。知人によると、大倉尾根よりも眺めも良く、お勧めだということだったので、次はこのルートで登頂を、と考えていたのだ。
7時39分、大倉バス停を出発。
鍋割山ルート入り口。ここから登山開始。
鹿よけネットをくぐって、本格的な山道に入る。
暫くは緩やかな林道が続く。
山桜がきれいに咲いているポイントもあった。
右手に沢や、ちょっとした滝も姿を現す。このあたりは清涼感があって気分のいいポイントだ。
8時35分、二俣着。この先に見える木の橋を渡って、沢の向こうに移る。
数分歩くと、分岐の看板が見えてきた。道なりに進むと鍋割山、右の横道に入ると、ここからが小丸尾根ルートだ。
やや急な坂を暫く登る。
10分強で、「小丸まで2000m」の看板。まだまだ先だ。
その看板を過ぎて程なくして、なだらかな稜線に出た。木々も薄く、まずまずの眺望を楽しみながら、しばし快適な道を歩く。
様相が変わってくるのは、「小丸まで1500m」ポイントを過ぎて少ししたあたりから。九十九折の細い坂が続く。
巨大な倒木に出くわした。他の木にもたれかかるようにして、宙ぶらりんになっている。
「小丸まで1000m」ポイント前後から、木の根がむき出しになった急登が続く。幅が広いので、歩くのに一番適したコースを判断して登ろう。
坂を登りきった先にも難所が。幅1mにも満たない痩せ尾根。両側とも急斜面なので、滑落しないよう注意が必要だ。
痩せ尾根を切り抜けたかと思うと、また木の根がむき出しになった急登、九十九折の細い坂と、難所が続く。
九十九折の道の途中、折り返した先に、何ががうごめいている。
鹿だ。
こんなに間近に、飼い慣らされていない野生の鹿を見るのは初めてだった。私が歩みを進めると、警戒心の強い鹿はそそくさとその場を離れていった。
鹿でよかった。これが熊だったりしたら、冬眠明けのタイミングになるので惨事となっていたかもしれない。
そう言えば、この山を登る登山客は、熊よけの鈴を鳴らしながら歩いている人が少なくない。私も次の機会には、用意していこう。
九十九折の道を歩いているうちに、谷側の視界が開けた。
眼下に、秦野市方面の眺望が広がっていた。奥の方にはかすかに、相模湾も見える。
急登で疲れ切っていた私の心に、この眺望は一服の清涼剤となってくれた。
程なくして、10時15分、鍋割山~塔ノ岳の主稜線上の小丸分岐にようやく到着した。
来た道を振り返ると、小丸尾根ルート入り口に看板があるのが目に入った。
「こちらの登山道は遭難の多い道です」
そんな道を通ってきたのか??
確かにきつい道だった。
・道の傾斜が割と厳しい箇所があり、やや登りにくい。下るともっと厳しいか?
・途中に茶屋などが全く無い。
・登山客が余りに少なく、心細い。
富士山で言えば、御殿場ルートに例えてもいい難コースと言えるだろう。
登りはまだしも、下るとなると、中級者に足を引っ掛けた程度の私には難しそうだ。下りは歩き慣れたバカ尾根を歩くことにしよう。
これまで登ってきた急登に比べると、ここから先の、塔ノ岳に至る主稜線のルートは楽なものだ。
10時36分、金冷シの分岐に到着。ここまで来れば、塔ノ岳の山頂は間近だ。木道・木段が整備された歩きやすい登山道を一気に進む。
10時52分、塔ノ岳登頂。コースタイム3時間35分といわれるところを3時間15分ほどで登りきった。途中立ち止まったのは、写真を撮ったりペットボトルの水を飲んだりした程度で、ほぼ休憩無しでの一気登りとなった。
塔ノ岳山頂には、拘留孫仏(狗留尊仏)と呼ばれる仏像が祀られている。
山頂から西に目をやると、丹沢山系の山並みの絶景を見ることができる。
南に目をやると、小田原や相模湾を望むことができる。
残念ながら、富士山は雲に隠れて見ることができなかった。
前回、前々回はここがゴールとなり、そのまま下山したが、今回はもう少し先まで足を延ばすことにした。