早朝。名残を惜しむように弘前城を再訪した後、出発。
一端新青森まで戻り、そこからバスで南の山奥へと向かう。
八甲田山を横目にバスはどんどん山奥へと分け入り、奥入瀬渓流へと入る。
当初、私はこのバスの終点にまで行くことしか考えていなかったが、バスに乗っている間に沿線にこの場所があることを知り、時間に余裕があったこともあってにわかに立ち寄りたく思い始めた。
幸い、今回私はこの路線のバスに2日間何度でも乗り降りできるチケットを買っていたので、バス料金を気にする必要もない。私は馬門岩というバス停で下車し、バックパックを背負ったまま渓流沿いの遊歩道を歩き出した。
思い立ってよかった。渓流の、時に穏やかで、時に激しい、心地よい響きが私の心を癒してくれた。
時には滝もあり(↑は雲井の滝)、
時には倒木もある。
いろいろなものをひっくるめて、これが“自然”、これが奥入瀬渓流なのだ。
そして、一番のインパクトだったのが、
高さ7メートル、幅20メートルの銚子大滝。轟音とともにすさまじい水量がなだれ落ちている。
更に上流で足を進めると、目の前に橋が見えてきた。その橋の下から向こうを見ると、細い川が急激に広くなっているのが分かる――いや、橋の向こうは川ではない。
[間違いない!]
遊歩道から橋の上に上がった私の眼前にあったのは…
十和田湖である。
「おぉぉぉぉ!!」
私のテンションは頂点に達していた。きっとそれは、自分の足で歩いて来てこの湖を眼前に見たからだろう。バスに乗ったまま車窓越しにこの風景を見ても、きっとここまで感動しなかったに違いない。
しかし…
天気が生憎だった。空は分厚い雲。風は強く、湖面は激しく波打っている。先ほどまで渓流で感じていた自然の“優しさ”とは裏腹に、そこにあったのは自然の“厳しさ”だった。
湖畔の宿に入って暫く待っていたが、今度は雨まで降ってきた。雨が止むのを待って外出したが、風の強さは相変わらず。体感温度も、冬に戻ったかのような寒さだ。
雨が止んだすきに、取りあえず十和田湖のシンボル的存在である、高村光太郎の「乙女の像」を見に出かけた。美しく、心和む彫刻なのだが、やはり曇天ではなく晴れた空の下で見たかった。
それでも、夕暮れ時には辛うじて西の空が少しだけ赤く染まってくれた。
明日はもっといい天気になってくれれば…
ちなみに、↑の写真の手前に川が写っているが、実はこの細い川が青森と秋田の県境なのである。
そう。十和田湖は青森と秋田の2県にまたがっているのだ。上記の写真で右側が青森、左側が秋田、ということで、この写真を撮った場所は秋田県である。
今回の旅では秋田県は予定に入っていなかったのだが、思いがけず秋田に足跡を残すことができた。