金沢で朝を迎える。
石川県には、来たことはあるものの肝心の金沢はスルーしてしまっていた。
この旅に出る前に、鉄道マニア(乗り鉄)の知人に青春18きっぷの使い道について話を聞いたところ、
「西を目指すなら、東海道線じゃつまらないから、日本海経由で金沢とか立ち寄れば?」
とのお言葉をいただいた。
[そうか、今こそ金沢を目指す時だ!]
という訳で、ベタではあるが、この日は朝から金沢街巡り。(名所に行きやすいよう、宿は香林坊に選んでいた)
まず、
金沢城
さすがは前田加賀百万石。復元とはいえ、想像していた以上に立派なお城だった。
しかし、ここで突然の雨。
――いや、
氷の粒になったぞ。
あられだ。
あられになったのは一瞬だけだったが、その後も雨は続いた。どうやら金沢は「弁当忘れても傘忘れるな」と言われるくらい雨が多い土地柄らしい。
そして、金沢と言えばやはり
兼六園。
この日はいい具合に、入場料無料だった。
数日前に旅友が「雪つり綺麗だった」とFacebookに書いていたので期待していたのだが、松の木に張られた綱に、雪はひとかけらも貼り付いていない――この雨が雪に変わらないのだから、やはりこれでも暖かいのだろう。
とはいえ、兼六園は雨でも、いや雨だからこそなのかもしれないが、古式ゆかしい風情に満ちている。日本人の心の源泉とでもいうのか、そこには「侘びさび」の精神が具現化されているようにも思われる、心洗われる落ち着きがあった。
一回りしているうちに、雨はやみ、晴れ間も顔を見せるようになった。
先程までは「雨だからこそ風情がある」とか思っていたが、やはり太陽を求めるのが人間の本能なのか、陽の光が降り注いで明るく映える兼六園もやはり美しく感じられる。
そうこうしているうちに、出発を想定していた時間(10時)が近づいてきた。この電車を逃すと1時間待たなければならないので駅までのバスが渋滞に巻き込まれでもしないかとちょっとハラハラしたが、割と余裕をもって乗ることができた。
再び青春18きっぷで、鈍行の旅。
福井
敦賀
で電車を乗り継ぐ。敦賀からの新快速にそのまま乗っていけば、湖西線経由でこの日の最終目的地に最速で到着できるが、その間にも行きたい場所はある。せっかくの乗り降り自由な青春18きっぷなのだから、最速で行ってしまっては勿体無い。
そして、その行きたい場所は湖西線ではなく北陸本線・東海道線の沿線だ。私は敦賀で乗った列車を僅か2つ目の近江塩津で下り、湖東回りの新快速に乗り換えた。
50分後、私が下り立ったのは、彦根。井伊家の下で栄えた城下町だ。
――じゃない。ひこにゃんにお目にかかれたのも嬉しいが、もっと大切なものがある。
言うまでもなく、
彦根城。復元されつつある天守閣の無い金沢城に対し、こちらは江戸時代の天守閣が現存する国宝の城だ。
規模は小さいながら重厚ないでたちで、存在感は抜群だ。
天守からは琵琶湖を見下ろすことができる。この風景を見ていると、同じく琵琶湖沿岸に安土城を築いた織田信長が琵琶湖を見下ろしながら天下を目指した気持ちが少し分かるような気もした。
彦根城で予定よりも若干長い時間を過ごしてしまったが、ここまで来たら列車の便数も多い。彦根から新快速で一気に、この日の目的地へ向かった。