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【レビュー】映画「雪の下の炎」(楽真琴 監督)

<3月10日>
チベット民族蜂起50周年当日・・・

不気味なほど、現地の様子が伝わってこない。

しかし、何も起こっていないはずもないだろう。中共当局の報道締め出しが功を奏してしまった格好である。

※               ※               ※

さて、話題は変わりまして・・・

当サイトでも告知しました映画「風の馬」「雪の下の炎」プレミア上映会に行ってまいりました。東京・渋谷のアップリンクの会場は満員。キャンセル待ちが出るほどでした。

順番としては、まず「風の馬」、次に「雪の下の炎」でしたが、ここでは当サイトで書籍も含めて強くプッシュしてきた「雪の下の炎」について先に紹介したいと思います。
(注:この映画は2009年4月11日から本公開されています。映画館で見るまで内容を知りたくない、新鮮な気持ちで本公開を迎えたい、という方はここまで!!)

 

チベットに人権など存在しません。
私がその生き証人です。

この一言で映画は始まりました。

パルデン・ギャツォさんの生い立ち、逮捕、獄中の様子などが当時の映像・画像も交えて淡々と語られます。
語り手は勿論、パルデンさんが中心。獄中で受けた力と言葉の暴力 ―― しかしそれに屈することなく、正面から立ち向かっていった様子には書籍同様、痛々しさと同時に力強さが伝わってきます。
自らに拷問を加えた者に対しては、普通なら恨みを感じることでしょう。しかしパルデンさんは
「彼らも手心を加えてしまったら、任務を履行しなかったかどで追及を受けることだろう」
と、むしろ許し、哀れみさえ抱いています。チベット仏教の慈悲の心 ―― 単純にその一言で纏めてしまうのは適切ではないかもしれませんが、いずれにせよ、恨みというマイナスの感情を心に蓄積しなかったこともまた、パルデンさんが33年という苦痛の日々を耐え抜くことができた一因なのかもしれません。

その他、彼の獄中の同士に時折語らせたり、彼が実情を知り得ない尼僧の証言を挿入したり、チベットの問題について海外のチベットサポーターに語らせたり、そしてダライ・ラマ法王のお言葉を交えるなど、変化をつける工夫がされていました。
そして、そうした方々の言葉を効果的に挿入することで、チベットの現実、監獄の現実の描写により広さと深さが加わっていました。

そして、書籍「雪の下の炎」出版後の、書籍には書かれていない重要なエピソード・・・

2006年に冬季五輪が行われたイタリア・トリノにおける北京五輪中止を訴えるハンスト。

これが、パルデンさんの獄中生活を訴えることと並ぶこの映画の重要な柱の一つだった気がします。

[お年なんだから、無理しなさいでくださいよ!]

まるで現場にいるかのような緊張感が伝わってきました。

結局、商業主義にまみれたIOCは全く動かず、パルデンさんたちは思いを実現させることができませんでした。
しかし、決して徒労ではなかったと思います。その決意と実行力はこの映画などで人々の心を打ち、志はしっかりと伝わり、受け継がれていくことでしょうから。

パルデンさんは今でも、デモの先頭に立つなどして「フリー・チベット」を訴え続けています。
専ら獄中生活を描いた書籍が注目を集める中、ともすれば「33年の獄中生活」に関心が集中しがちになるかもしれませんが、釈放・亡命後の”今”もしっかり伝えなければパルデンさんの全てを知ることはできません。
1998年出版の書籍がカバーしていないその部分を苦心してフィルムにまとめ、伝えてくれた楽真琴監督には最大の感謝・尊敬の念を表するところです

非業の死をとげた彼ら(獄中での同志)のため
パルデンさんの闘いは今後も続きます。
後年再びパルデンさんの人生が何らかの形でまとめられることがあれば、その時は1998年の書籍や2009年の映画とはまた違った「雪の下の炎」に仕上がることでしょう。

※               ※               ※

次回は「風の馬」のレビューです。

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4 thoughts on “【レビュー】映画「雪の下の炎」(楽真琴 監督)

  1. キム監督、コメントありがとうございます。

    『雪の下の炎』『風の馬』そして『チベットチベット』、いずれもチベット問題を考える上で必見の良質なフィルムです。
    ヒットのために、私たちも力を尽くしましょう。

  2. カズさん、こんにちは!お久しぶりです。楽です。お元気ですか?

    ここに書かれたコメントをウェブのほうに転載したいのですが、よろしいでしょうか?
    お返事をメールに頂けると幸いです。よろしくお願い致します。

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