一昨日、政治犯として31年間拘束され、拷問・虐待を受けたチベット人パルデン・ギャツォさんの著書のレビューを書きました。
同書で描かれたのは獄中の様子のみでしたが、チベットの至る所で人権侵害が行われている実態を伝えるドキュメントがネット上に公開されました。
The International Campaign for Tibet 拷問禁止委員会提出資料
http://www27.atwiki.jp/ictreport/
2008年11月3~21日の日程で行われた国連拷問禁止委員会の第41回審議に提出された報告書を約1か月かけて大勢の人々の手で日本語訳したものです。
パルデンさんが著書で書いているように、抑圧者は自らの抑圧を隠そうとするものですが、今回の審議では、侵略国のこうした不誠実な態度が問題視されたようです。
報告書では、過度の強制行為、勾留中の処置と拷問の使用、監禁と拷問、精神的・心理的な虐待、反ダライ・ラマ政策の実施と弾圧を原因とする自殺、治療の拒否、報復的実力行使と強制連行(失踪)問題、刑事免責と法的代理人を得る権利の拒否――について言及されています。
チベットの人権侵害の場は、何も獄中だけではありません。市中で人が銃殺され、僧院でダライ・ラマを公に非難するよう強いられるという嫌がらせが行われ、病院で治療を拒否するなどのことが日常的に行われているのです。
文中で、こうした行為を「文化大革命当時の暴挙を彷彿とさせ」と表現しています。また、3月14日(2008年のチベット大弾圧の日)以降のラサに於いてほとんどのチベット人の家庭で誰かしらが失踪している事態を「第二次文化大革命」と評する証言者の声も書かれていますが、この評価は違うと思います。チベットでは50年の間がずっと文革状態にあるのです。
17年前に釈放されたパルデンさんが著書で描いた地獄絵図が現在に至っても何ら変わっていないことが、この報告書でよく分かります。
太古の昔でもなく別の星でもありません。人権が重視される現代のこの地球において、こうした蛮行は続けられているのです。