台北-3 ~故宮博物院
2012年12月31日
台北を訪れるのはこれで2度目なので、なるべくまだ行ったことのない場所を訪れようと心掛けていたが、どうしてももう一度、いや何度でも訪れたい場所が一つあった。
故宮博物院
MRT(地下鉄)士林駅からバスに乗り継いで、再びその場所に向かう。
故宮博物院である。
先にも書いたように、私は中国の古き良き文化を求めて一度は大陸に渡ったが、そんなものはもはや大陸には無いと気付いて戻って来たことがある。文化大革命で失われた中国の伝統文化は、寺社や漢字だけではない。北京の故宮博物院の文物も大量に破壊されているのだ。
しかし、北京の故宮博物院所蔵品は元々あったものの一部にすぎない。大多数の目ぼしい文物は、蒋介石率いる国民党が敗走してきた際に一緒に台湾に持ち込まれたのである。それを管理するのが、台北の故宮博物院ということだ。
毛沢東ほどではないにせよ、蒋介石もひどい政治家だった。しかし、この点だけは評価してもいい。勿論結果論にすぎないし、蒋介石にとっては「図らずも」のことだったに違いないのだが、結果的に中国の歴史を語る貴重なこれらの文物を文革の禍から守ることになったのだから。
1階から3階まで、一通り見て回った。絵画、書、陶磁器、青銅器、玉器――どの展示物も、中国文明の歴史の深さと重さを物語るものばかりだ。特に賑わっていたのが、3階の302室。ここに展示されている翠玉白菜(文字通り、ヒスイで作られた極小の白菜)は故宮博物院を代表する目玉展示物だ。その他、前回訪れた時にも心を引かれた、極小ながら微細な竜船の玉器など、その細やかさに心を奪われる宝物が数多い。これだけ時間をかけて一巡りしても、表に見えているのは68万点にも及ぶ所蔵品の氷山の一角に過ぎないというのだ。
――確信した。
中国共産党は、中国伝統文明の破壊者である。
中華民国は、中国伝統文明の保護者である。
どちらが中国文明の継承者と呼ぶにふさわしいか――もはや言うまでもあるまい。
中華民国こそが、正統なる中国文明の継承者なのだと言っていい。
※
ここまで褒めちぎってばかりだが、残念なことも少しだけあった。
1つは、展示物の中に僅かではあるが、チベットの文物が含まれていたこと。
「チベットは中国のもの」という考え方は、台湾の中国人にもまだ根強く残っているようだ。
もう1つ。これは旅行社の方々にお願いしたいことだ。
団体ツアーは、極力少人数でやってはもらえないだろうか。
今回の故宮博物院参観の際にも、多くの団体ツアー客がいる中を参観して回ったが、10人を超える団体が1つの展示物の前で立ち止まってガイドの話を聞きながら参観されると、後ろから展示物を覗き込むことすらできず、心ならずも「邪魔だ」と心の中で舌打ちしてしまう。
ガイドの人数を抑えて人件費を抑えるなどの事情があるのも分かるが、団体ツアーで博物館などを巡る際にはできれば5人程度の少人数にして他の参観者の妨げにならないように配慮していただくことはできないものだろうか。
※
参観を終えて表に出ると、中国共産党にカルト呼ばわりされて弾圧を受けている法輪功が反中国共産党のキャンペーンを行っている。香港やマレーシアでも見た光景だが、大陸でこんなことやろうものならものの5分で拘束されるところだ。
確かに不気味な集団なので彼らを積極的に支援する気持ちは起きないが、中国共産党の弾圧を受けているという点では私が支援しているチベットと同じだし、何より世界最悪級のカルト集団にカルト呼ばわりされていることには同情を禁じ得ない。
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