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世界への旅(旅行記)

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イラクリオン・4 ~城壁の上から

聖ミナス大聖堂から更に南へと進むと、イラクリオンの旧市街を囲む形で築かれている城壁に行き着いた。どうやら上に登れそうである。
[行ける所まで行ってみるかな]
暇つぶしにはちょうどいいし、街を上から眺めることもできる。私は1200年の歴史を持つというその城壁の階段を上がっていった。

イラクリオンの城壁
イラクリオンの城壁
イラクリオンの城壁城壁からの風景
城壁からの風景

目論見通り、城壁の上からはイラクリオンの旧市街を一望することができた。その向こうにはエーゲ海が水平線までくっきりと見える。白を基調とした家屋が並ぶ街並みと、青いエーゲ海と空の色の調和が、爽やかで美しい。
一番目立つ建物は、先程訪れたばかりの聖ミナス大聖堂だった。さすがはクレタ島最大の教会。周りの建物と比べても圧倒的な存在感がある。
ニコス・カザンザキスの墓
ニコス・カザンザキスの墓
途中、ニコス・カザンザキスの墓などを訪れつつそのまま城壁の上を東へ東へと進んだ。やがて城壁の上の道は緩やかな下り坂となり、気がつけばどこかの駐車場に入り込んでいた。そこで城壁は途切れ、少し離れた所から更にバスターミナル、オールド・ハーバーの方向へと更に続いていく。

城壁を下りた先には、割と賑わいのある広場に出た ―― いや待て。この広場には見覚えがある…
エレフテリアス広場だ。
昨日はデモが行われていたこの広場である。そして先程、クノッソスから戻って真っ先に訪れた考古学博物館がすぐ近くにある場所でもある。つまりは、巡り巡って元の場所に戻ってきたという訳だ。

乗船時間まであと2時間ほど。再び宿のある25アウグストゥス通り近くをぶらぶらして過ごす。道端では、硬い所に叩きつけると一度グシャッと潰れてまたムクムクと元の形に戻る豚やトマトの形をした丸いおもちゃを売る露店が幾つか見受けられた。アテネでもよく見かけたおもちゃで、ギリシャの露店では定番のようだ。
クレープ
日本の常識を覆すクレープ
夕刻のオールド・ハーバー
夕刻のオールド・ハーバー
少し小腹がすいてきた。ベニゼル広場のカフェでメニューを見ると「Crape」の文字が目に入る。クレープなら今の腹にちょうどいいだろう、とハムとチーズ入りのものを注文した。ところが出てきたクレープを見て驚いた。日本でよく見るクレープの軽く3倍ぐらいのサイズではないか。手に持って歩きながら食べられるようなお手軽感は無い。しっかりと「これでお食べ」と言わんばかりにフォークがついてきている。皮もやや厚く、具もたっぷりで日本のクレープの常識を覆すボリュームだ。もはや“スナック”の域を超えている。これは立派な“料理”と言っていいだろう。

最後に、名残を惜しむかのようにオールド・ハーバーに出てエーゲ海を眺める。空は少しだけピンクがかってきたが、エーゲ海はまだまだ青い。
天気にも恵まれて、イラクリオンで、ハニアで、クノッソスで、実に心地の良いヨーロッパの景色を拝むことができた。駆け足ではあったが、充実したクレタ島での2日間だった。

午後8時前。まだ出港まで間があったが荷物をピックアップしてピレウス行きのフェリーに乗船した。
午後9時、出港。暫くはデッキのカフェで過ごしていたが、2日前の往路の時よりも更に寒い。生ビールを1杯飲み終えたところで、早々と前回同様シートの船室に潜り込み、ピレウスまでの一夜を過ごす。しかし、船室の一部がカーテンで仕切られていたのが少し気になった。

※ニコス・カザンザキス…ギリシャの小説家。1883―1957年。代表作に『キリストはふたたび十字架に』など。

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