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世界への旅(旅行記)

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ピレウス ~クレタ島へ

ピレウス駅
ピレウス駅
ピレウスは地下鉄1号線の終着点である。プラットフォームが少しレトロな駅舎に覆われ、レールが終わった先に駅の出入り口があるというその風景は、映像や写真等でよく見るヨーロッパのターミナル駅そのものだ。

駅舎を出ると目の前はもう港だ。しかし、私が乗るクレタ島イラクリオンへの船は駅舎側から見て一番奥の方に停泊している。船までもう一歩きだ。

船は大きなカーフェリーだった。船尾の入り口を、乗用車からトラックまで大小さまざまな自動車がくぐり抜けていく。
人も同じように船尾から乗船するが、まずは右端から入ってクロークに大きな荷物を預け、その後今度は左端に移動してキャビンに入る。
但し、私が買ったチケットのクラスは「デッキ」。即ち、船室を割り当てられないものである。取りあえず、甲板の上に設置されたカフェのテーブルに陣取って出港を待つ。
ピレウスの港
ピレウスの港

午後9時。フェリーがゆったりとピレウスの港を後にする。辺りは既に真っ暗だ。時間と宿代の節約のためとはいえ、エーゲ海を航行しながらその青い水面を見ることができないのは少々勿体無いような気もした。
暫くはカフェで食事をしたり日記を書いたりして過ごしていたが、さすがに夜の海の上は風も強く、寒い。デッキのチケットだからそれは仕方が無い ―― という訳でもない。実はアテネのゲストハウス内にあった旅行代理店で船のチケットを買った時、こんなやりとりがあったのだ。

「このチケット随分安いけれど ―― シートですか? デッキですか?」
「デッキです」
「デッキか…」
「大丈夫ですよ。デッキの席でも、シートの船室に紛れ込んで問題ありません。席はまず空きがありますから」

その言葉通り、シートの船室に行ってみると確かに半分以上の席が空いていた。私は迷うことなく、到着までの一夜をここで過ごすことにした。しかし、事前にフェリー会社のWebサイトで調べたところ、このクラスの船室を「航空機の座席タイプ」と書いてあったが、実際の座席は航空機のエコノミークラスと比べても遥かに貧相で、クッションの効きも悪く、寝心地が悪い。それに、外に比べればましではあるものの、この船室も間違いなく「寒い」部類に入る。

[空気枕…寝袋…]

安眠を補助するそれらのアイテムは全て、バックパックの中だった。丸ごとクロークに預けてしまったことを後悔した。

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