ボロブドゥール-5 ~蘇った古代仏教遺跡
2014年5月2日
サンライズの景色を満喫したところで、あらためてボロブドゥールの遺跡の方をじっくり観察してみよう。
ボロブドゥール遺跡は1970年代にUNESCO主導で大規模な修復工事が施されたのだが、その時に敢えて完全に修復しなかったのではないか、と思われる部分もある。
その一つが、先述した円壇部分で一体だけ表に露出してる仏像である。
円壇部分に並ぶベル(鈴)のような形の仏塔には菱形の穴が規則正しくあけられているのだが、そこから中を覗いてみると、仏像が安置されているのである(但し、首から上が無いものも少なからずある)。その中の一つは「幸福の仏像」と呼ばれ、菱形の穴から手を伸ばして触れるとご利益があるといわれている。
表に露出している仏像も、周りに仏塔の痕跡がしっかりとあるのだ。推測ではあるが、わざわざ仏塔の中を覗かないでも仏像の姿が見られるように、修復時にこの一体だけ仏塔を外して露出させたのではないだろうか。
一体だけ表に露出してる仏像
仏塔の中の仏像
さて、開場時間の6時を回った。これからは来場者がどっと押し寄せてくることだろうから、そうならないうちに下りてしまおう。
勿論、下りる時も途中の回廊をコルラして回る。ここに刻まれているレリーフのストーリーも気になったが、やはりガイドブックとにらめっこしながら歩く気にはなれなかったので、雰囲気だけ心で感じながらゆったりと歩いた。
「隠れた基壇」
遺跡を下りて一番下の基壇の周りを巡ってみると、東南の角の基壇が切れていて、その中に最初に造られた時の基壇といわれる「隠れた基壇」が見える。ここも恐らくは、遺跡の構造がよく分かるようにと修復の時に敢えて露出させたものだろう。
7時近くになると案の定、来場者が遺跡にどっと押し寄せてきた。外国人をはじめとする旅行客のほか、社会見学に来たインドネシアの子どもたちも大勢いる。
しかし、この遺跡を信仰心を持って見つめる人々はどのくらいいるのだろうか。
勿論、仏教徒でなければ信仰心は無くても構わない。ただ、どんな立場であろうと、「世界遺産」としてだけではなく、「聖地」であるという意識で見てもらいたい、と思った。
と言うのは、円壇部分の門番的存在である獅子の像にまたがるという不届きなことをする来場者がいたのである。遺跡保護の観点からも、宗教的観点からも、慎んでいただきたい行為である。
そう言えば、以前訪れたタイのアユタヤでも不届きで罰当たりなことをする輩が後を絶たないようだった。
見るべきものは見たので引き揚げることにしたが、前日通ったあの土産屋街を通るのはもう嫌だった。そこで私は、この日入場したルートを逆戻りする形でホテル・マノハラに通じる出入り口から出ることにした。このルートにも物売りは数人いたが、あの土産屋街を通ることを思えば大したことは無い。
ボロブドゥール遺跡を振り返る
途中、振り返ってみると木々の間にボロブドゥール遺跡がかなり広範囲にわたって見える。
仏教遺跡というだけで神聖さと有難さが感じられたが、かつてここで栄えた仏教が大乗仏教だったことが、普段日本で大乗仏教に触れている私に親近感をも覚えさせてくれた。
今ではイスラム教徒が多数を占めるこの国で仏教遺跡が蘇ったというのも嬉しい限りである。遺跡の修復に尽力してくれたUNESCOには、心の底からの謝意と敬意を表したい。
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