黄龍 ~石灰岩の美しき別天地
2001年8月12日
ツアー3日目。体調が悪いまま、バスで標高3000メートル超の峠を越えて黄龍へ。
清流の流れる浅い渓流の底は、黄色がかった石灰岩で覆われ、その形は鱗のようにも見える。まさしく、黄色い龍が地面に伏しているかのようだ。
龍の鱗のような川底
棚田のように連なる池
更に進むと、石灰岩が棚田のような形になって、その中に鮮やかな青の水をたたえ、幾つもの池を連ねている。
九寨溝も神秘的だったが、こちらはそれ以上に、自然の摩訶不思議さを感じさせてくれる。一体、どんな過程を経てこのようなものが形成されたのだろうか。この黄龍という景勝地は、私の想像力をはるかに超えたところにある。
もっと奥に行けば、黄龍寺などのチベット寺院もあり、そこまで行けばここがチベット文化圏であることを実感することもできたであろうものの、何分にも体調が悪かった。私はそこまでは行けず、(今にして思えば実に勿体無い話だったが)途中で麓に引き返すことにした。
帰りの道中、同じツアーの中年女性と老女と一緒になった。中国語で話を交わしたが、どうも馬が合わない。老女に到っては、日本人である私に対して敵意すら表しているかのようだ。彼女の年代の中国人なら、日本人に敵意を抱いても不思議ではない。というより、これまでそういった態度の中国人に出くわしたことが無いことの方が、却って不思議な位だ。それは分かっているのだが、そんな態度を取られて愉快に思う者がいるはずがない。体調の悪さも手伝って、私はこのツアーが早く終わってほしいとすら思うようになってしまっていた。
黄龍遊覧を終え、再びバスでもと来た峠道を走る。しかし、その道中、風邪以外の症状が表れてきた。何か、息苦しさを感じ始めたのだ。
[高山病だ!]
チベット行きの道中でもそれ程には感じなかった高山病の症状が、あろうことかここで出てきてしまったのだ。
最初にも記した通り、黄龍は標高3000m級の高地にある。遊覧の途中にも、酸素吸入のチューブを鼻に差し込んで、輿に乗せられて黄龍巡りをしている観光客を見かけた程だ。しかし、いくら標高が高いとはいえ、高地の環境に慣れたはずの私がこの体たらくということは、風邪で体は相当弱ってしまったようだ。
ホテルに到着。ようやく体を休めることができる。前2泊は同室の中国人がいたが、この夜は一人部屋になった。正直、ほっとした。相手に風邪をうつす心配も無い。
しかし、ほっとした理由は、それだけなのだろうか ―― いや、違う。私は明らかに、ツアーで行動を共にしている中国人たちに、拒否反応を示し始めていた。
注:黄龍は本来中国ではなくチベットの版図に属する。
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