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日本100名城

100名城探訪記

山陽・山陰西部100名城(7)―津和野城

2025年5月5日

萩で迎えた早朝。もう一度城下町を散策した後、萩バスセンターを8時42分に発つ高速バスで新山口駅へ移動する。
次は山口県を出てすぐの島根県津和野が目的地だが、事前にスケジュールを組んでいた時、ちょうどいいタイミングでいい列車が出ていることに気づき、予約が取れる初日にすぐ挑んだのだが、ゴールデンウィーク(GW)ということもあって窓際の席は即完売、通路側の席しか取れなかったという人気の列車だ。
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SLやまぐち号(新山口駅にて)
その列車は、SLやまぐち号。新山口―津和野駅間の63kmを2時間以上かけてゆったりと走るD51形蒸気機関車である。GW休みを利用した親子連れの客、鉄道マニアの客で新山口駅のホームは大賑わいだ。
10時54分、出発。SLは煙を噴き、時折汽笛を鳴らしつつ、山口の街中を抜けて山あいの田園地帯へ。車窓からの風景の中で常に誰かが沿線で手を振ってくれ、こちらからも手を振り返す――心温まる光景だ。
13時すぎ、SLは津和野駅に到着。荷物も預かって頂ける駅前のレンタサイクルショップで大きな荷物を預けて、自転車で津和野の城を目指す――と、その前に、「山陰の小京都」と呼ばれる津和野の街巡りだ。本町通りや殿町通りは両脇に古めかしい建物やコイが泳ぐ水路などが往時の風情を醸し出している。 写真
津和野の殿町通り
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森鷗外旧宅
津和野はまた、明治の文豪・森鴎外が幼少期を過ごした街でもある。城を少し通り過ぎた所には森鷗外旧宅、森鴎外記念館が佇んでいる。
これまでの道でも時折見えていたが、森鷗外旧宅から津和野川の畔に出ると、川を挟んだ先の山の上にいよいよ、津和野城(100名城No.66)が間近に見えてきた。 写真
山の下から望む津和野城
津和野城は鎌倉時代の元寇の後に吉見氏によって築かれた三本松城が始まりだ。戦国時代、大寧寺の変で大内義隆を滅ぼした陶晴賢に対して吉見氏が挙兵して三本松城で100日以上に及ぶ籠城戦となった三本松城の戦いの舞台となった。
山麓からの高さは約200mとそう高くはなく徒歩で登ることも可能だったが、余り時間をかけたくなかったので、ここは素直に山頂の登城口まで設置されているリフトで上った。 写真
津和野城 出丸
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津和野城 出丸の上
リフトを下りて山道を上るとすぐに出迎えてくれるのが、出丸。ここでまず侵入者を迎え撃つことになるのだろう。
出丸から更に歩き進めていざ核心部へ――というところだったが、本来の道は修復工事中で、あずまやから先は鉄パイプで設けられた仮設階段を通ることになった。 写真
津和野城 天守台
仮設階段を1つ越えて、まず西三の丸に当たる馬立・台所・海老櫓の曲輪に行き着く。その先に控えるは天守台。津和野城は関ヶ原の戦いの後に吉見氏に代わって津和野に入った坂崎氏の時代、大改修が行われて石垣を多用した近世城郭となる。天守も坂崎氏の時代に三重のものが建てられたが1686年、落雷による火災で焼失する。現在では天守台を残すのみとなるが、石垣が見どころである津和野城の名石垣の1つだ。
天守台の奥から最後の仮設階段を上った先が、津和野城最大にして最高部の曲輪である本丸の三十間台だ。その南端からは人質櫓跡、三の丸、そしてその向こうに津和野の盆地を見渡すことができ、津和野城随一の展望スポットになっている。 写真
津和野城 本丸跡・三十間台から望む人質櫓跡と三の丸
三十間台や北側の太郎丸を巡った後、三の丸に下りてみる。三の丸から見上げる人質櫓跡と本丸の石垣を見上げると、その迫力にただただ圧倒される。また三の丸の際から本丸を眺めると、津和野城が断崖の上に築かれていたことを実感することができる。 写真
津和野城 三の丸から望む人質櫓跡と本丸跡
津和野城巡りを終え、リフトで下山して自転車で津和野駅前に戻る。
まだ時間に余裕があったので、一旦自転車を返却し、徒歩でもう一度、本町通りや殿町通りを散策して古き良き津和野の街並みを楽しむ。
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新山口へと向かうSLやまぐち号
そして津和野川に架かるJR山口線の鉄橋の下でカメラを準備して暫く待っていると、津和野駅の方から汽笛が聞こえてきた。先程津和野まで乗ってきたSLやまぐち号である。「乗り鉄」から今度は「撮り鉄」になった私は、新山口への帰路へと出発したデゴイチを写真に収めつつ見送る。
私の次の目的地は、SLやまぐち号とは逆方向だ。駅に戻って、北へ向かう普通列車に身を委ねて出発する。

日本海に面する山陰の益田駅で山陰本線に乗り換えて、島根を日本海沿いに東へ。浜田駅で下車してこの日の宿に入る。明日は朝からこの街にある城を巡る予定だ。

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