バス憧れの大地へ

日本100名城

100名城探訪記

東北・西北海道100名城(7)―松前城

2023年5月3日

道南いさりび鉄道
道南いさりび鉄道
五稜郭登城・100名城スタンプ獲得を達成し、次の名城を目指す私が函館駅から乗り込んだのは、道南いさりび鉄道。渡島半島の沿岸を函館から南西の木古内まで結ぶ(正確には、道南いさりび鉄道の区間は五稜郭~木古内で、函館~五稜郭の区間はJR函館本線に乗り入れている形だ)、北海道新幹線の開通でJRが廃線とした江差線をそのまま引き継いで使用した、第3セクターによるローカル線だ。
10時34分、函館駅を出発。前半はやや内陸のコースを辿るが、後半は津軽海峡を見渡せる眺望が心地いい海辺のコースだ。天気がよければ対岸の下北半島を見ることもできる。海の景色以外にも花などが見事な場所があり、差し掛かる前には車掌さんが声を掛けてくれるので見逃すことなく景色を楽しむことができる――こういうのがローカル線のいいところだ。 道南いさりび鉄道から望む津軽海峡
道南いさりび鉄道から望む津軽海峡
道南いさりび鉄道沿線の花の風景
道南いさりび鉄道沿線の花の風景
11時41分、北海道新幹線が青函トンネルを抜けて1つ目の駅でもある木古内に到着。この日はここで1泊するが、次に目指す城自体は木古内から更に先にある。
その場所へ向かうバスは30分後の12時10分――のはずだったが、どうやら僅か1か月前にダイヤ改正があったようで、私が乗ろうとしていた便は平日のみの運行に変わってしまっていた。幸い、次のバスでも行って木古内に戻ってくることは可能だったので、私は木古内駅に隣接した道の駅 みそぎの郷 きこないで時間を潰しつつ次の便を待った。
3時間ほどの待ちぼうけを経て14時52分、目的地へのバスがやって来た。バスは再び渡島半島の沿岸部~内陸部~沿岸部を西へと走っていく。
1時間半をかけて、16時20分頃、松城バス停に到着。ここから歩いてすぐの場所にあるのが、松前城(100名城 No.3)だ。100名城のスタンプが設置されている松前城資料館(天守)は入館受付が16時30分まで。予め電話で「閉館時間の17時までならスタンプは受け付ける」という言質は得ていたが、ギリギリだったものの何とか滑り込みで入館して、内部の参観とスタンプ獲得に間に合った。 松前城の天守と本丸御門
松前城の天守と本丸御門
松前城は江戸時代末期、北方の海防強化を迫られた江戸幕府が松前藩に命じて築かせた、最後の日本式城郭だ。明治に入り戊辰戦争が勃発すると旧幕府軍と新政府軍の間で争奪戦が繰り広げられた。ちょうど私が訪れる直前に週刊イブニングで連載(当時)されていた漫画「賊軍 土方歳三」で、松前城攻防戦が詳細に描かれていた。
泰平の世・江戸時代に入って建てられた城は軍事性が薄く装飾性が強いといわれるが、この松前城の天守はそういった築城の経緯からか、逆に破風などの装飾性が無く極めてシンプルな外観だ。現存する本丸御門と、外観復元された天守がシンボルになっている。
松前城から望む津軽海峡
松前城から望む津軽海峡
復元天守内部を参観して退出すると本丸御門が出口になる格好だが、その先にあったのは津軽海峡を、その向こうに本州(津軽半島)を望む絶景だった。この光景を見ていると、この城が蝦夷地の海防の拠点だということが実感できる。
ここで天守台に目をやると攻城戦時の弾痕が見られるなど、当時の激烈さを物語っている場所もある。 松前城天守台に残る弾痕
松前城天守台に残る弾痕
道南いさりび鉄道沿線の花の風景
法華寺の旧幕府軍砲台設置箇所
一度城跡を離れ、近くにある法華寺を訪れた。ここは松前城の戦いの折、土方歳三率いる旧幕府軍が砲台を設置して松前城を攻撃した場所だ。境内の片隅には砲台設置箇所を示す碑がひっそりと立っている(墓場の中にあるので見学の際には要配慮)。奥の方には旧幕府軍の合同慰霊碑も設けられている。
京都で新選組に参加し、果ては北海道にまで転戦してきた土方歳三――正直、人斬りのイメージがまとわりつく新選組そして土方歳三に対して私はこれまでネガティブな感情の方が強かったが、土方の一直線でブレない信念そして生き様には、方向性は別として、どこか共感せずにはいられない。 松前城本丸広場に咲く桜と春の花々
松前城本丸広場に咲く桜と春の花々
再び松前城内に戻り、今度は海側から見て天守・本丸御門の奥の本丸広場を訪れる。前日に訪れた弘前城同様、遅咲きの桜が咲き誇るほか、芝の地面の上も春の花が美しく彩っている。激戦地だった過去と憩いの場である現在――松前城はそんな二面性を併せ持っている。

松城バス停18時10分発のバスで木古内に戻る。この日は木古内で1泊して、明日はここを拠点にもう一つ道南の名城を訪れる予定だ。

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