説明文が詳細だったこともあって、ひめゆりの塔で思いの外時間を費やしてしまった。近くの食堂で「ひめゆりそば」と名づけられた沖縄そばを昼食にして、次の場所へと向かう。
次の場所は、ひめゆりの塔から東へ4kmほど行った所にある平和祈念公園。ひめゆりの塔と同様、先の沖縄戦による戦没者たちを悼むことを目的とした施設だが、ピクニックやバーベキューを楽しむ人々もいて憩いの場所にもなっているようだ。
まずは、この公園で一際目に付く平和祈念堂に入る。奥に進むと巨大な仏像が安置されていて、台座の下には各都道府県や世界各国から寄せられた平和を願う石が展示されていた。しかし、それらの石の贈り元となった国の中には、未だ他国と戦闘状態にある国もある。平和を唱えることと平和を維持することの違い、平和を維持することの難しさがそこに暗示されているようにも思われた。
平和祈念堂
海へ向かって足を運ぶと、無数の黒い石の壁が地面から生えるようにして並んでいる。「平和の礎(いしじ)」と呼ばれるこの石の壁には、1つ1つにおびただしい数の人名が刻まれている。ここに刻まれている名前の持ち主は全て、国籍・軍人・非軍人の別を問わず沖縄戦などで亡くなっていった人々だ。即ち、これらの黒い石の壁が林立する光景こそが、沖縄戦がいかに惨憺たるものだったかを象徴しているのだ。
そしてその先にあるのが、この公園の象徴的な場所である、平和の火だ。この火が海に面する断崖絶壁の上に灯されているということは、沖縄発の平和の願いが「世界」へ向けられているということに他ならない。
平和の火。後ろに見えるのが平和の礎
その他、この公園内にある摩文仁の丘には、各都道府県が建立した慰霊碑が建ち並んでおり、平和への祈りが全国規模で行われている。
平和への思いを新たにして、那覇への帰路に就く。
途中、喜屋武岬へちょっと寄り道。本島最南端に果てしなく近い場所にあるこの岬もまた、沖縄戦で多数の自決者を出した悲劇の場所であり、「平和之塔」が建てられている。
喜屋武岬。左に見えるのが今回の“足”となった自転車
喜屋武岬の平和之塔
更にその近くにある具志川城を訪れているうちに16時半になってしまった。自転車を貸してくれたNPOは18時までしか営業していない。あと1時間半で那覇に戻らなければ…
もはや脚はパンパンになっていたが、とにかく必死になって自転車のペダルをこいだ。そして17時50分――ぎりぎりで自転車を返すことができた。