バス憧れの大地へ

世界への旅(旅行記)

スリランカ、インド

ミヒンタレー ~南伝仏教始まりの地

2015年5月2日

この日は午前中にポロンナルワから次の街へ移動。初めは地元の人がバスを乗り降りしている場所でバスを拾おうとしたのだが、どのバスに乗ればいいのかよく分からなかったことと、来るバスがいずれも満席なことから、すぐにバスターミナルまでトゥクトゥクで移動して確実に目当てのバスで座って行ける方法に転換した。

バスが到着したのは、ポロンナルワから北東へ80kmほどの場所にあるアヌラーダプラ。北中部州の州都ということで、終着点であるニュー・タウン駅周辺はかなり賑わっている。
ここでの宿は旧市街の方にあるSenowin Holiday Resortという、気さくで親切な女将さんと大きな図体ながら人懐こくて可愛い犬が看板的存在のゲストハウスだ。
「明日の列車でコロンボに行きたいのだが…」
と話すと、女将さんはあちこちに電話をかけて切符の状況を確認してくれた。残念ながら翌日の列車は空きがなかったようだったが、ゲストのために尽力してくれるその姿勢は実にありがたかった。
それでも列車を諦め切れずにアヌラーダプラ駅(先ほどバスが到着したニュー・タウン駅とは別)に行ってみたが、やはり翌日の切符は無理なようだった。仕方ない。明日のコロンボ行きはまたバスを利用することにしよう。

余談だが、スリランカではなかなか酒を買える場所が見つからず、数日間禁酒を余儀なくされていた。ところが、アヌラーダプラ旧市街から駅へ向かう交差点近くのスーパーマーケットの一角にようやく酒屋を見つけることができた。この日の夜、私は4日ぶりの美酒で喉を潤すことになる。

アヌラーダプラもポロンナルワ同様、仏教遺跡の多い街だが、そちらは明日に回すことにして、この日はバスで30分ほどポロンナルワ方面に戻った場所にあるスリランカ仏教の聖地ミヒンタレー(ミインテール)を訪れることに集中した。
右側に「目印」が見えたところでバスを下りて暫く歩くとミヒンタレー考古学博物館があり、その横から延びている階段を上がって小高い丘の上へと向かう。目印になるのが、先ほどバスを下りる目印にもなった、山の上にそびえる白亜のダーガバ(仏塔)マハー・サーヤ大塔だ。
カンタカ・チェーティヤ
カンタカ・チェーティヤ(丘の上から)
途中、巨大なダーガバの遺跡カンタカ・チェーティヤを通る。この遺跡は2000年以上前の紀元前60年頃に建てられたというから、それだけでもこの一帯の歴史の古さを窺い知ることができる。しかし実は、この地がスリランカ仏教の聖地である所以(ゆえん)は、更に昔へと歴史と遡ることになるのだ。
会議場跡食堂跡などの小さな遺跡を幾つか横目にしながら更に歩くとチケットオフィスに辿り着く。ミヒンタレーの聖地はここからが本番で、この先は靴を脱がなければいけない。しかし、地面の土は熱帯の太陽にさらされてかなり熱くなっている。靴下は履いてもいいということだったので、ヘタレな私は地面の熱さに耐えられず靴下を着けたまま先へ進んだ。
境内は周りを高台に囲まれていて、マハー・サーヤ大塔を右手に、近年できたという真っ白な大仏を左手に見ながら中へ進む。

マハー・サーヤ大塔
マハー・サーヤ大塔
真っ白な大仏
真っ白な大仏

更に右側奥には、シーギリヤ・ロックのミニチュアのような岩山インビテーション・ロックが丘の上に生えるようにして屹立している。
岩の上に上がることができたので、私も岩の急な斜面を削って設けられた階段を上って行った。しかし、どうも足元がおぼつかない…。
原因は、靴下だった。つるつるな岩と靴下とでは、摩擦係数が低くなって滑りやすくて仕方がない。
こうなったら熱いとか言っている場合ではない。私は靴下を脱いで、熱さに耐えながら裸足で岩を上って行った。照りつける太陽の熱線もあり、上から下から、身悶えるような熱さに悩まされる。
インビテーション・ロック
インビテーション・ロック
岩の頂上から見えたのは、緑のジャングルに覆われた大地と、それを貫くようにして横たわる青い川のパノラマの風景だった。岩自体の存在感もさることながら、ここから見える下界の眺めも素晴らしい。
マハー・サーヤ大塔からの眺めも同じように素晴らしく、先ほど見たカンタカ・チェーティヤが大地に埋もれてちっぽけに見えるくらいだ。

いずれも存在感のある場所だ。しかし、この地で一番大切な施設は、実はこれらの派手な施設に囲まれるようにして、一段低い場所に奥ゆかしく建っていた。
その施設とは、アムバスタレー大塔
規模こそマハー・サーヤ大塔にははるかに及ばないが、この仏塔があるのは、シンハラ王朝のデーワーナンビヤ・ティッサ王がインドのアショカ王の息子マヒンダと邂逅し、仏教に帰依したまさにその場所と言われている。即ち、この地こそがスリランカの仏教伝来の地であり、南伝仏教始まりの地なのだ。

アムバスタレー大塔
アムバスタレー大塔

この小さな島国の小さな国から、東南アジアなどの広い地域で信仰される一大宗派が発信された――そのことに歴史という大河の大きさ、悠久さを感じるとともに、今自分がその場所にいるということに心を揺さぶられた。

アムバスタレー大塔がある広場の一角に水汲み場があり、信者の方々がそれを有難そうに頂いていた。
[これは、「聖水」に相違ない…]
そう考えた私は、手持ちのの水が無くなりかけていたこともあり、このパワースポットのご利益を分けて頂こうとその水をペットボトルに注いで持ち帰った。幸い、腹を下すようなこともなく、アヌラーダプラの街中に帰るまでの貴重な命水となってくれた。
(注:私の胃腸は海外で鍛えられている。個人差があるので、海外では飲料水として売られているもの以外の水は原則飲まないこと)

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