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世界への旅(旅行記)

スリランカ、インド

シーギリヤ-2 ~壁の中の女たち

2015年4月30日

シーギリヤ・ロックの入り口から少しばかり石段を上ると、木製の桟道と金属製の階段で整備された遊歩道が待っていた。かつてカシャパ(カーシャパ、カッサパ)1世がここに立て籠った当時には勿論、防御を重視してこのような歩きやすい道は無かったことだろう。
シーギリヤ・ロックの螺旋階段
上へ向かう螺旋階段

その道を更に進むと、次に待っていたのは螺旋階段だった。岩の中腹まで1回転、2回転、3回転――どうやらビル5階分は上るようである。中腹までで既にビル5階分というのが、この岩の巨大さを物語っている。

螺旋階段を上った先には、幾人もの人々が待っていた。性別は全員、女性。大胆に乳房を露わにしている者すらいる。
――とは言っても、現実の生身の人間ではない。彼女たちがいるのは、壁の中――即ち、壁に描かれた人物画だ。前回、シーギリヤ博物館でレプリカを見たと書いた「有名な壁画」というのが即ちこれである。
シーギリヤ・レディ」と呼ばれるこの美女たちは、カシャパ王の当時に描かれたフレスコ画である。これが1600年も前のものかと驚かされるくらい色鮮やかで、よく保存されている。しかし、このレディたちは元々500人以上描かれていたのが、風雨や破壊にさらされてしまい、原形を留めているのは僅かに18人だという。
壁の中の女たちは皆、穏やかな優しい表情をしている。父を殺すという大罪を犯したカシャパ王が父の鎮魂のために描かせたともいわれているが、或いはカシャパ王自身も、この穏やかな笑顔に罪の意識を和らげるための癒やしを求めていたのかもしれない。

シーギリヤ・レディのフレスコ画
シーギリヤ・レディのフレスコ画(2016年以降撮影禁止になったもよう)

シーギリヤ・レディの回廊を抜けたところで、今度は下りの螺旋階段。再び先ほどの高度まで戻る

階段を下りて更に先へと進むと、左手に褐色の壁が現れた。「ミラー・ウォール」(鏡の回廊)というらしい。確かにツルツルで一部は光っているようにも見えるのだが、「鏡」と呼ぶほどには光沢は無い。番をしていた係員に聞いてみた。
「この壁がなぜ『ミラー・ウォール』なのですか?」
「昔はこの壁に(向かい側の岩面に描かれていた)シーギリヤ・レディが映っていたのですよ」
なるほど、そういうことか――残念ながら千数百年の月日を経て、回廊は両側とも往時の輝きを失ってしまっていた。

ミラー・ウォール
ミラー・ウォール
食料倉庫跡と攻撃用の岩
食料倉庫跡と攻撃用の岩

鏡の回廊を抜けるとその先には上り階段。それを上りつつ下に目をやると、人が生活していた痕跡である食料倉庫跡が見える。そのすぐ先には岩が少し浮くような感じで崖の上に座しているのが見える。これは、敵を攻撃するために設置されたものだという。カシャパ王にとっての敵とは、弟であるモッガラーナ――こちらは痛ましい骨肉の争いの痕跡だ。

階段を上り切った先には広場があったが、ここはまだまだ中間地点――と言うよりも、ここから先がむしろ本番なのだ。

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