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世界への旅(旅行記)

モロッコ

マラケシュ-3 ~スークを“迷う”

2013年10月27日

史跡地区からジャマ・エル・フナ広場まではリヤド・ジトゥン・エル・ケディム通りを通って戻る。車がやっとすれ違える程度の細い路地だが、史跡地区と広場を文字通り一直線に結ぶ分かりやすいプチ幹線道路で、朝一番はひっそりしていたものの、時間おいて戻ってきてみると店もぼちぼち営業を始め、人通りも多くなってきて賑わいが増してくる。
リヤド・ジトゥン・エル・ケディム通り
リヤド・ジトゥン・エル・ケディム通り
民族楽器を奏でる男性
民族楽器を奏でる男性
通りの一角で、ベルベル人だろうか、ギターのような民族楽器を奏でる男性がいた。ストリートミュージシャンとはいえ、民族音楽を聴くという貴重な機会が得られた。私が心ばかりのチップを渡すと、彼はにこやかな表情でそのチップを収めた。

「チップ」という言葉が出てきたところで、モロッコのチップ文化について一言。
モロッコは欧米並みのチップ社会だ。ホテルやレストランなどでサービスを受けた時には相手にお礼のチップを渡すのがマナーだ。とはいえ、そんなに高額である必要は無く、通常のサービスなら数DH、レストランなら食事代の10%程度を渡せばいい。
ところが、中にはチップと称して高額の金を要求してくるたかり、ぼったくりの類がいる(蛇使いの大道芸人や押し売りガイドなど)。大したことをしてくれた訳でもないのに3桁(参考までに、70DHあれば安宿のシングルルームに泊まることができる)に達するような法外な額を要求された場合、見合わないと判断したら頑として断って構わないだろう。

話を旅の様子に戻そう。

翌日からサハラ砂漠のツアーに参加したいと思っていた私だが、通りで声をかけてくる客引きに着いて行くよりも自分で見つけた旅行社で申し込んだ方が安心だと思って旅行社が無いかと探していたところ、ちょうどこのリヤド・ジトゥン・エル・ケディム通りで見つけることができ、そこで翌日からの2泊3日のサハラツアーに申し込んだ。そこでの料金は980DHだったが、750DHほどで参加できる所もあるので、節約したいのであればじっくりと探した方がいいだろう。

宿をWifiのある向かいのオテル・イムーザに移し、外で昼食をとってエネルギーをチャージしたところで、さあ、いよいよマラケシュの迷宮・スーク(市場)巡りだ。

マラケシュのスーク
商店が立ち並ぶマラケシュのスーク
マラケシュのスーク
露店も多い

まさに“迷宮”。ここは「歩く」とか「巡る」とかいう言葉よりも、「さ迷う」いやそれを通り越して「迷う」という表現が実に似つかわしい。時には開けた場所もあるものの、道は基本的に狭く、そして、入り組んでいて方向感覚を保つことが極めて難しい。その狭く入り組んだ路地を、モロッコってこんなに人口が多いのか?と呆れてしまうくらいに大勢の人々が歩き、買い物をしている。特に、ベン・ユーセフ・モスクベン・ユーセフ・マドラサ(旧神学校)一帯の人ごみは活気もひとしおだ。
市場は、開けた場所では露店も多いが、基本的には道の両側に店舗が組み込まれた形だ。他の国の市場で見てきたような値段交渉のバトルが熱く展開されているという印象は受けなかったが、人いきれだけで十分な熱気が生み出されている。
また、あちらは鍛冶屋のスーク、あちらは革職人のスーク、あちらは金属製品のスーク、というように、商品の種類による住み分けが行われてもいる。商店だけでなく工房が設置されている店もあり、マラケシュのスークは商業地区であると同時に軽工業地区でもあると言うことができよう。

マラケシュのスーク
溢れんばかりの人、人、人
マラケシュのスーク
フルーツの店

売られているものを見ていると、ここは観光客向けの市場では決してなく、地元の人々が食料や生活用品を手に入れるための市場であるということがよく分かる。私もここで買い物をしたが、買ったのはT字かみそりや革のサンダルなど、旅に必要な日常用品ばかりだった。
ただ、品質は当たり外れがありそうだ。私が買ったサンダルは、何かの動物の血で色を染めていたようで、夜になって宿の共同シャワーで体を洗った後、濡れた足でそれを履いたらみるみるうちに赤黒い液体が染み出してきて、何か私が大怪我をしたのではないかと誤解されてしまいそうな水溜りができてしまった。

さて、スークの様子に話を戻すと、市場になっているメインストリートからは幾つもの、もはや自動車が通ることも不可能なほど細く、そして両側には高い壁がそびえる裏道が枝分かれしている。
マラケシュの路地裏の居住エリア
迷路のような路地裏の居住エリア
その裏道の先は居住地区だ。幹線から枝分かれした先に居住区があるというのは、まさに蟻の巣に比することができるだろう。後先考えずに深入りしてしまえばそのまま出られなくなってしまうような奥行きと複雑さがあり、不思議な魅力を感じると同時に恐れのようなものも胸をよぎる。
ここで生活している人々にとってはこれがごく普通であり日常であるのだろうが、よそ者にとっては、未知であるが故に、これこそ非日常的な本物の“迷宮”ということになるのだろう。

このスークでは、何かを目指して歩くということはやめてただひたすら勘に任せて歩く、いや“迷う”ことにしてひたすら歩き回った。スークを出る時も「よし、そろそろ出るか」と心に決めて出たのではなく、歩き回っていたらいつの間にか出口に着いていた、という具合だった。
そんな終わり方だったので、私は1回だけでは飽き足らず、夕方前にもう一度このスークを迷いに出かけることになる。
マラケシュのスークには、訪れる人をそんな気持ちにさせる“魔物”が住んでいる。

ジャマ・エル・フナ広場
ジャマ・エル・フナ広場を見下ろす
コブラ使い
屋上からコブラ使いをこっそり撮影

ジャマ・エル・フナ広場に戻り着いた私は、広場を見下ろす屋上カフェに上がって一息ついた。
朝見た時は昨夜の賑わいが嘘のようにひっそりとしていた広場には、大道芸を見せる人々やそれを取り囲む聴衆たちの姿が徐々に増えてきている。ここからなら、あのぼったくり大道芸人のコブラ等もタダで写真に収めることができる。
しかし、少々賑わいが出始めているとはいえ、夜に屋台が出るエリアはやはりまだがらんとしている。この広場の“目覚め”はもう数時間先だ。

※当時のレート:1DH≒12.5円

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