バス憧れの大地へ

世界への旅(旅行記)

ラダック、北インド(2011年)

トゥジェチェンポ・ゴンパ(アルチ)

2011年9月24日

さて、アルチのゴンパ地区に戻ったところで、ゴンパ見学である。
この地区にはゴンパが4つほどあるが、私はそのうち2つに絞って訪れることにした。

まず、山の斜面を少し上がって橋を渡った先にあるトゥジェチェンポ・ゴンパへと向かった。
トゥジェチェンポ・ゴンパ
しかし、着いてはみたもののどの建物も閉ざされているか、工事中かのいずれかである。よくよく手持ちのガイド本を見ると「開くのは朝夕のみ」と書かれている。
[タイミングを間違えたか…]
と、引き揚げようとした時のことだった。
「ジュレー」
中からラダッキ(ラダック人)のおばあさんが声をかけてきた。ラダック語で話しかけてくるので言葉の内容は分からないのだが、私の持っているガイド本を見せなさいと身振りで言ってくる。トゥジェチェンポ・ゴンパのページを見せると、
「そうそう、ここね」
と言う。どうやら、拝観料を払えば中を見せてくれるようである。財布の中から10ルピー、20ルピーと出したところ、30ルピーで開けてもらえることになった。
おばあさんは1、2分ほど中に引っ込んだ後、若い女性に私が支払った30ルピーを渡しながら出てきた。その後は、その女性が案内してくれた。
(それにしても、ゴンパの管理に俗人の女性が携わっているってどういうことだろう…)

案内されたのは、工事真っ最中の建物だった。1階の部屋の鍵を開けてもらって中に入ると、正面のケースに観音像が安置されている。
しかし、この部屋の主役は観音像ではなかった。
おびただしい数の仏様(千仏画)と、大小の曼荼羅が幾つも描かれた壁こそが、この部屋の主役だった。よく見ると、吹き抜けになっている先の2階、3階にも壁に仏画が描かれている。
曼荼羅

その部屋の参観が終わると、女性は鍵を閉めて立ち去って行った。それでもまだ何かがありそうな気がしてウロウロしていると、工事をしていた俗人の男性が
「2階にもありますよ」
と言ってくるので誘われるがままに上がって扉を開けてみると、今度は本尊があるべき部分に大きな曼荼羅の壁画が描かれ、周りの壁にはやはり千仏画が描かれていた。
201109240303.jpg
1階に戻ると、やはり工事をしていた俗人の男性が
「こちらもどうぞ」
と、先程まで正面の床の工事で自分が塞いでいた扉の向こうへと促す。
そちらにも入ってみると、真ん中にポツンとチョルテン(仏塔)が1つ建っている。
しかし、ここでも主役はチョルテンではなかった。やはり、壁に描かれた大小さまざまな曼荼羅とおびただしい数の仏様が圧倒的な存在感を放っていた。
201109240304.jpg

どの曼荼羅も仏画も、美術的レベルの相当高いものである。しかし、ここで感じるべきは芸術性よりもやはり宗教性だろう。
不思議な気分だった。まるで自分が、この世とは違う仏教の世界にいざなわれたような感覚に襲われた。既にラダックで幾つものゴンパを訪れたが、現世を離れたような感覚はこれが初めてだった。

不思議といえばもう一つ――このゴンパでは、僧侶にお目にかかることがついぞ無かった。

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