パンゴン・ツォとの別れ~ヤクとの出会い
2011年9月22日
車は昨日来た湖畔の悪路を、今度は立ち止まることもせずにひたすら走り続ける。しかし、昨日は山々を映し出していた部分もあった湖が、今は一面のブルーになって私たちの右手に横たわっている。これを見てカメラの虫がうずくのを抑えられるほど、私は我慢強くはなかった。カメラのシャッター速度をかなり早めに設定すると、私は車の窓を開け、湖との名残りを惜しむかのように青い湖面を写真に収め続けていた。
やがて湖を離れて峠道に入ると、それも叶わなくなった。車はパンゴン・ツォに別れを告げ、来た時と同じように峠道をひた走り、チャン・ラ峠を越えていく。
峠を越えて20分ほどした時のことだった。
草原の中に牛のような動物がいるのが見える。しかし、普通の牛ではない。長い毛をふさふさと伸ばしていて、角も牛より長い。
――ヤクである。
今回の旅で、これまではヤクと牛の交配種であるゾばかり見てきたが、正真正銘のヤクにはなかなかお目にかかれずにいた。
実は、それが私にとっては大きな不満だった。
[どうして、チベット文化圏に来ながらこうもヤクに巡り合えないのだ?]
レーの土産屋には「Yak Yak Yak」とか「Hard Rock Yak」などと刺繍されているTシャツが売られているにもかかわらず、である。
ヤクのいないチベット文化圏なんて――と思い始めていた矢先の出会いに、私はようやく、チベット文化圏に来た感慨をほぼ完全に満たすことができた。後は、ヤク肉の料理さえ食べられたら・・・(おい)
(ちなみに、ヤクとゾの見分け方は、角が後ろに反っているのがヤク、反らずに上に伸びているのがゾであるとのこと)
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