バス憧れの大地へ

世界への旅(旅行記)

ラダック、北インド(2011年)

パンゴン・ツォ

2011年9月21日

車が進むにつれ、パンゴン・ツォは次第にその姿を露わにしてきた。一段高い所に敷かれた道路の下に、真っ青な湖面を横たえている。
真っ青な湖と言えば、私はこれまでにも、チベットのココ・ノール(チベット名:ツォ・ゴンポ、漢字名:青海湖)、ナムツォ、ヤムドク湖やペルー~ボリビアのティティカカ湖などを見たことがあるが、それらに比べると青さがやや淡い気がする。しかし、それはまだこの地点が湖の端っこで深さが足りないせいもあるかもしれない。
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最初のドライブインで暫く湖を散策。さすがにチベット文化圏の湖だけあってタルチョも飾られている――のだが、チベット本土のナムツォに比べるとその数が圧倒的に少ない。更に、その後南岸を南東へと進むことになるが、それ以降タルチョは殆ど見られなくなってしまった。

ここから先の湖岸の道は悪路が続いた。四駆の車でなければ進むことはまず不可能だろう。

少しばかり東へ進んだところで、運転手が「ここもビュースポットですよ」と車を停めた。どうやら、パンゴン・ツォを一躍有名にしたインド映画『Three Iriots』の撮影現場がここだったらしい。
ここでは、残念ながら湖の青さは影を潜めていた。その代わり、逆さ富士のように周囲の山々が湖面に移るという別な形での美しさを見せてくれた。
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ここで、湖の水をちょっと口に含んでみる――少ししょっぱい。塩湖だった。

更に悪路を南東へと進み、この日の宿泊場所となるスパンミクを一度通り過ぎてマラクへと向かう。
実は、マラクは現在のところパンゴン・ツォ湖畔で外国人が行くことができる限界地点であり、しかもほんの昨年まではスパンミクまでが限界地点だったのだ。

なぜ、外国人の行ける場所が制限されているのか――その答えは即ち、この湖に行くためになぜパーミットやパスポートチェックが必要なのかの答えでもある。

実は、パンゴン・ツォはインドと中国チベット本土の国境を跨いで大地に横たわっている(インド・ラダック側は湖全体の4分の1にすぎない)のである。そしてこのエリアは、インドと、チベットを占拠している中国との国境紛争(1962年)の舞台となったのだ。そういう敏感な場所であるが故に、外国人の入域が厳しく制限されているのである。
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湖の東側(右)と山の向こうは中国チベット本土だ

ラダックを訪れる旅行客に人気の湖にはパンゴン・ツォのほかにツォ・モリリという所もある。人によってはツォ・モリリの方が神秘的でいい、と勧めることもある。しかし、私が敢えてパンゴン・ツォを選んだ理由にはこれがあったのだ。

[この湖は、チベット本土と繋がっているのだ・・・]

湖の青さを見るまでもなく、その事実があるだけで、パンゴン・ツォを目の前に私のテンションはピークに達した。
そして、東の方に向かって私はひっそりと叫ばずにはいられなかった。

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