ジャカルタ-2 ~モナスの見守る街
想像以上に華やかだったジャカルタの町並み
ジャカルタの町並みは想像以上に賑やかで華やかだった。熱帯の日射しが降り注ぐ中、ヤシの街路樹が植えられた内側には真新しいビルディングが建ち並び、外側では自動車やバイクで溢れかえった大通りがある。同じ東南アジアの首都でも、バンコクほどには混沌としておらず、クアラルンプールに近い安定感とクリーンさが感じられた。
しかし、その裏側には先ほど列車の中から見たようなスラムが大都会から隔離されるようにして存在していることも忘れてはならないだろう。
私はまず、国立中央博物館へ足を運んだ。ここでは毎週火曜日と第1日曜日に日本語無料ガイドツアーが行われるのだが、この日はちょうど火曜日。せっかくなのでこれに参加することにした。
午前10時に到着してしまったが、ツアーは10時半からだった。暫くエントランスで待っていると、日本のご婦人たちが続々やって来た。その様子を見てすぐにピンときたが、後でリーダー格のご婦人に尋ねてみたところ、彼女たちは駐在員の奥様方で、ボランティアでこのツアーのガイドをやっているという。
なかなかいい試みではないだろうか。ここを訪問した日本人のインドネシアに対する理解が深まるのも勿論ありがたいことだが、案内する奥様方が自分が暮らしている国の文化について解説できるほどに精通するということも多分に有意義である。
この日の参加者は ―― 私1人。大勢の奥様方がいらしたにもかかわらず、実際にガイドをしたのはその中の1人とお目付役のリーダーの方だけだった。
全部解説して回るとさすがに時間がかかるので解説は要所要所でのみだったが、それでもインドネシアの歴史・文化がしっかり垣間見えてくる。帝国主義列強の侵略時代にオランダに支配された経緯や海洋国家ならではの船の文化の解説などが印象に残った。
ツアーが終わった後は自分のペースで博物館を回ったが、それを終えて博物館を出ようとした時、ガイドの奥様方が談話室でミーティングをしている様子が目に留まった。ここを訪れた日本人客に少しでもインドネシアを理解してもらおうと努力するその姿に、頭が下がる思いである。
国立中央博物館のすぐ東にはジャカルタの中央広場であるムルデカ広場がある。その中央にそびえ立つ高さ137mの塔がジャカルタのランドマークであるモナス(独立記念塔)だ。台座の上に端正な形の白い塔が置かれているような格好で、あたかもろうそくと燭台のようにも見えるが、実はリンガとヨニ※を模しているらしい。
ジャカルタのランドマーク・モナス(独立記念塔)
モナス地下の独立記念ジオラマ
(スカルノ大統領独立宣言の図)
この塔は1961年起工、1975年竣工で、独立した1945年からはかなり時を経て建てられている。ではなぜこれが「独立記念塔」なのかと言うと、その秘密はその地下にあった。
モナス入場後、まず誘導されるのは地下。そこではインドネシア独立に至る歴史がジオラマによって物語られていた。日本軍によって「労務者」が強制労働に駆り立てられた経緯を説明する展示など日本人にとっては耳の痛い部分もあったが、特に怨嗟のようなものは感じられず、ただ歴史を淡々と物語っているという印象だった。
モナスからの風景。中央に見えるのが
イスティクラル・モスク。そのすぐ右奥にはカテドラルが
モナスからの風景。中央のガンビル駅舎向こうに
見えるのがイマニュエル教会
リンガの先っぽ ―― もとい、塔の最上部にある展望台に、混雑するエレベーターで上ってみる。
中心部は、地上で見上げた時に感じた程には高層ビルディングは多くなく、しかもこの塔から見下ろされるぐらいのものばかりだった。しかし数km先に目をやると、摩天楼が林立している風景があり、しかもこの塔よりも高いと思われるものも見受けられる。ジャカルタのビジネス街は市の周辺部に発達しているのだろうか。
中心部で一際目立つのが、イスラム教のイスティクラル・モスクである。高層ビルが5つぐらい入るのではないかと思われる広大な敷地に巨大な白いドームと尖塔が建っている。ただでさえ大きいのに、周囲に高層建築が無いためなおさら存在感がある。
イスティクラル・モスクのすぐ側にはキリスト教のカテドラルが、ガンビル駅東側には同じくキリスト教のイマニュエル教会もあるが、イスラムのモスクに比べれば圧倒的に小規模で注意して見ていないと見過ごしてしまう。これがインドネシアにおけるイスラム教とキリスト教の勢いの差なのだろう。ちなみに、ここから仏教的な風景は全く見ることができなかった。
ジャカルタの街巡りをできるのは今日1日だけだ。展望台から見たモスク等にも関心が無くはないが、他に訪れたい場所がある。それらは上から眺めただけでよしとして、私は塔を下りて別の場所へと足を向けた。
※リンガ、ヨニとはヒンドゥー教でそれぞれ男性器、女性器の象徴。
コメント(0)
コメントする