マチュピチュ-1 ~“天空都市”全景
農地管理人住居跡周辺
遺跡入場口から暫く歩くと小屋(農地管理人住居跡)に行き当たる。そこから下へ迂回して進む道と上へ向かう道に分かれており、私は上への進路をとった。
やがて段々畑に出て視界が開けた。その眼下に目をやると…
「Whewwwww!!」
思わず口笛が出た。
そこに見えたのは、紛れもなく ―― 長年この目でその姿を拝みたいと願い続けてきた、インカの王族・貴族の避暑地だったといわれる天空都市・マチュピチュの堂々たる姿だった。
石造りの小屋が並ぶその姿は、このような僻地に人々が暮らしていたことを雄弁に語っており、それだけで驚嘆に値する。先ほど通過した段々畑も、かつての生活の営みを証言する語り部だ。
人が集まって暮らすエリアとしては決して大きい方ではない。「都市」と言うよりは「村」と言っていいくらいの規模だ。しかし、山の上という地形を考えると、限られたスペースを無駄なく利用した極めて秀逸な都市計画が行われていたことが思い知らされる。そして、15世紀という時代を考えると、シンプルでありながら強固なその建築技術にも驚嘆させられる。間違いなく、一級品の建造物遺跡だと言っていい。
マチュピチュ
一番有名なビューポイントである見張り小屋、葬儀の石一帯、そしてマチュピチュが裏側から見えるポイントと、少し角度を変えただけで、マチュピチュは刻一刻と姿を変えていく。私はそれらのポイントから見える風景を噛みしめるようにして、ゆっくりと足を進めた。
角度を替えてマチュピチュを望む
インカの橋
一番上のポイントまで登りつめると、森の入り口に「インカの橋 こちらから」という看板があった。
[『インカの橋』か。どんな橋なんだろう]
インカ征服の歴史と旅全体の大まかなルート以外殆ど予習をしてこなかった私にとって、全てが未知で好奇の対象となった。私はその場の思いつきで、その橋を見に行くことにした。
途中、出入りをチェックするポイントで名簿に名前を書き、細い山道を進んでいく。やがて目も眩むほどの断崖の中腹に設けられた、インカの橋が見えてきた。橋は丸木を数本渡しただけのシンプルなものだったが、敵が来たら落とす仕組みになっていたとのことなので、シンプルさはそのへんが理由なのかもしれない。
道は橋の手前で行封鎖されていた。と言うより、橋まで近づくのは余りに危険すぎる。遠目に橋を見るとすぐ、私は天空都市の上まで戻った。
森を抜けたところで、軽くにわか雨が降ってきた。
実は、今回の旅で一番気がかりだったのが天気だった。雨季ではないはずなのだが、出発前に天気予報をチェックしたところ、「降水確率90%」となっている。日程を変更することは不可能なので、雨に対しては万全の備えをして旅に臨んだ。
しかし実際に来てみると、日本で言う「降水確率90%」とは程遠い、天気に恵まれた日々が続いた。この時のにわか雨も、かつての見張り小屋でちょっと雨宿りしている間にすぐにやんでくれた。
[まさか、『降水確率90%』って『ちょっとでも雨が降る確率90%』という意味か?]
そんなことが頭をよぎったりもしたが、ともあれ、いい意味での“肩透かし”になってくれたことは幸い中の幸いだった。
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