クスコ-5 ~再び征服の爪痕
手前がサンタ・クララ教会、奥がサン・ペドロ教会
ステキな笑顔に癒される
今度はアルマス広場から南西の方向、サン・ペドロ駅のある方向へと歩いてみた。
途中、サン・フランシスコ教会とその前のサン・フランシスコ広場を右側に見つつ、その先の方を見ると、やはりスペイン様式のサンタ・クララ教会やサン・ペドロ教会などが見える。
[どこへ行っても征服者の文化か…]
本来なら癒しの材料となるはずの欧風建築に、次第にうんざりとしてきた。
唯一の救いは、カテドラルの左側から入った路地にあるインカ博物館だった。町並みの中では希薄になったかつてのインカの様子が展示物を通じて蘇ってくる。ほんの少しではあるが「invasion(侵略)」についての展示もあり、侵略について全く言及されていないどこぞのチベットプロパガンダ展とは大違いだ。
そして、何より癒されたのが、やはり子どもたちの笑顔だった。侵略され、抑圧を受けているチベットでは子どもたちに笑顔は余り見られなかったのだが、スペイン人主導とはいえ独立を勝ち取り、(恐らく)差別もない社会となった今、子どもたちの表情は生き生きと輝いていた。
さて、今度はカテドラル背後の丘を登ってサン・プラス教会のあるあたりへと来てみると、更に上の頂上に巨大なイエス像が見える。これもまた忌むべき“征服の爪痕”なのだが、
[あそこまで登れば、絶景が見られるな]
体もかなり高度に順応してきている。私は更にいい眺めを求めてそこを目指すことにした。
丘の上に立つイエス像
西日に照らされるクスコの町並み
しかし、行けども行けども近づいてくる気がしない。おまけに傾斜もどんどん急になってくる。
ゆっくり歩けば空気の薄さとの闘いはもはや問題ない。しかし、問題だったのは時間との闘いだった。既に太陽は大きく西に傾いており、あそこに到着できても帰り道が暗くなってしまう可能性が高い。ペルーの夜道はまだまだ安全とは言えないのである。
途中、まずまずの眺望が見られる公園を見つけた私は、
[目的はイエス像ではなくて、景色なんだから…]
と、あっさりイエス像まで行くのを諦め、そこから西日に照らされるクスコの町並みを楽しんだ。
征服への嫌悪感と美しいものへの感動との葛藤に悩まされ続けた1日だったが、そこから見える景色は嫌悪感というマイナスの感情を消し去ってくれるだけの見事さを有していた。
宗教博物美術館の石壁。どれが
「12角形の石」かお分かりだろうか
一番分かり易い道をたどって丘から下りると、先ほど私を憤らせた宗教博物美術館へとたどり着いた。インカ時代の石組み土台の前に、何やらインカ皇帝の扮装をした男性がいる。どうやら道行く人々が石壁に触らないよう監視しているらしい。
この石壁に使われている石は形はバラバラなのだが、「石と石との間はカミソリの刃すら通さない」といわれるほどぴったりと組まれている。中には12角形の石という複雑な形をしたものもある ―― ということはクスコを立ち去った後に知ったのだが、その石は偶然にも私のカメラにしっかりと収まっていた。
夕食は昨日と同じ店でペルー料理であるアルカパステーキを頂く。やはり20ソルと値段が張ったが、余りにけちけちしては本末転倒だ。バックパッカー=貧乏旅行者では決してないのだから。
さて、本日あちこちで見かけたアルパカ君のお肉の味は ―― 少々硬く、癖のある風味だったが不味くはなかった。
明日はいよいよ、今回の旅で一番の楽しみである、あの遺跡を目指す。
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