クスコ・1 ~欧風の美しい町並みは“侵略の爪痕”
雲間から顔を見せたアンデス
リマ空港を飛び立ったLANペルー航空便はあっという間に、リマ上空を覆っていた雲の上に出た。
青空の下に、果てしなく雲海が広がる ―― しかし、その風景は僅か10分少しで打ち破られた。雲間から、いや雲から突き出るようにして、褐色の山並みが姿を見せたのだ。
ペルーは、リマのような沿海地域(コスタ)もあれば、今向かっている場所のようなアンデス山系の山岳地帯(シエラ)もあり、更にはアマゾン上流域(セルバ)もありという、変化に富んだ地形を有している。今眼下にあるのは、平均標高3500mものアンデスだ。数千mもの上空を飛んでいる飛行機のほんのすぐ下に見えるその高さに驚くと同時に、沿岸部のリマを飛び立ってほんの僅かな間での地形の変化にも驚嘆させられた。
16時すぎ、クスコに到着。標高3600mの高地に建てられた、旧インカ帝国の古都であり、世界文化遺産にも登録されている。飛行機なら1時間半足らずの短い旅だが、バスで行くと険しい山道を通るためまる1日かかる距離なのだ。実質10日間と日程が限られている中で効率よくペルーを回るため、私はここだけ国内線を利用したのだった。
クスコのアルマス広場
カテドラル(左)とラ・コンパニーア・デ・ヘスス教会(右)
中心広場であるアルマス広場近くのロハス・ホステルに宿を決めた後、広場をぶらりと歩いてみた。
これまでアジアばかり歩きまわってきた私だが、ヨーロッパ文化も決して嫌いではない。いやむしろ、欧風のクラシカルな建築美などには憧れの念すら抱いている。
クスコの裏路地
漆黒の空に浮かぶような夜景
そんな私を、アルマス広場周囲のカテドラル(大聖堂)やラ・コンパニーア・デ・ヘスス教会、そして石畳の道などのクラシカルな趣は大いに惹き付けてくれた。広場の周辺、そしてそれを見下ろす山の中腹に建つ赤い瓦屋根と白壁の家屋もいい雰囲気を出している。夜になると、山のすそ野の家々に灯された灯りが、漆黒の空に浮かぶような幻想的な夜景を見ることもできる。
しかし ―― である。
よくよく考えれば、この町並みは征服者スペイン人によって造られたものなのだ。均整のとれた建築美も実は、インカ侵略の爪痕なのである。
目に映る光景は掛け値なしに素晴らしい。しかし、そうした歴史を知る心の目には、この光景を単純に「美しく、趣がある」ものとしてだけ映し出すことができず、複雑な、やりきれない思いにかられるばかりで、溜め息が出てしまった。
さて、夕食にしようかと、広場近くの店を見て回る。ところが、このあたりのレストランは観光客をターゲットにしていて大体20ソル(約7ドル)からと、アジアでB級グルメ三昧だった私にとっては結構な値段だ。安く済ませようと思うとハンバーガーか、少し離れた旧市街まで出向くかだが、前者は味気ないし、後者は治安に問題がある。折角だからペルーならではのものを食べたいし、だからと言って安さを求める余りに危険な目に遭っては元も子もない。
ここは大人しく、宿近くのレストランで18ソルのアヒ・デ・ガジーナ(ペルー風チキンシチュー)を頂く。
日中は日差しがあって割と暖かな天気だったが、夜になって急に冷え込んできた。クスコでは日中の気温差に注意が必要である。
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