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世界への旅(旅行記)

韓国、モンゴル

ハラホリン-3 ~エルデニ・ゾー

オルホン川から中心街へ戻り、西から東へと横断。昨日ちらりとしか中を見ることができなかったエルデニ・ゾーを今度はじっくりと巡る。
昨日見た時から既に感じていたが、敷地が広い割には建物が少なく、閑散としている。 エルデニ・ゾー
入り口近くから見たエルデニ・ゾー
聞くところによると、かつてここには60もの堂が建てられていたのだが、モンゴルで社会主義政権が発足後、仏教に対する弾圧が行われてことごとく破壊され、今では18棟が残るばかりだという。
どこかで聞いたような話だ。一部の者たちのイデオロギーのために貴重な歴史遺産・精神遺産が失われたことは遺憾でならない。
しかもこの時、エルデニ・ゾー最大のゴルバン・ゾー(三寺)、ダライラマ・ゾー(ダライラマ寺)などは軒並み門が閉ざされていた。いやそれだけではない。既に開放時間になっているにも関わらずチケット売り場まで閉まっている(つまりはタダで入ってしまった訳だが、その代わり寺院でお布施をした)。観光客を受け入れる態勢が全く感じられない。
[じゃ、何で門が開いているんだ?]
その答えは、敷地内を歩く観光客以外の人物たちにあった。エンジ色の法衣をまとったチベット僧たちが次々と門から入場してきて、ダライラマ・ゾーやアルタン・ソボルガ(仏塔)の前を通って奥の方にあるチベット寺院ラプラン・ゾー(ラプラン寺)を目指している。修行に来る彼らのために門が開放されていたという訳だ。

ダライラマ・ゾー、ゴルバン・ゾー
手前がダライラマ・ゾー、奥がゴルバン・ゾー
アルタン・ソボルガ
アルタン・ソボルガ

モンゴルが女真族の金や宋朝中国を滅ぼし、東アジアをその手にした当時、チベットとはユ・チュと呼ばれる檀家と寺のような関係で、モンゴルはチベットを保護し、チベット仏教を国内にとり入れた。エルデニ・ゾーほかモンゴル各地のチベット寺院は、それ以来モンゴルでチベット仏教が信仰されてきたことの証しである。
ラプラン・ゾー
ラプラン・ゾー
ラプラン・ゾーは規模こそそれ程大きくないものの、白壁といかにもチベットらしい装飾が印象的で、安定感の感じられる立派な寺院だった。先ほどから集まってきている僧侶たちが次々と中へ入っていく。
私も分厚いカーテンを開いて堂の中に入ってみた。すると中では、僧侶たちが勤行の準備にいそしんでいた。
[お呼びでなかったかな…?]
自分が場に相応しくない闖入者のように思われて、何かばつが悪くなった。私は誤魔化すようにしてご本尊の前に立ってお祈りし、僧侶たちにも手を合わせて、そそくさと堂の外に出た。
堂の周りにはご多分に漏れず、マニ車が並んでいる。それを回しながらコルラしつつ、考えていた。
[モンゴルでは社会主義の弾圧を乗り越えて信仰の自由が取り戻された。しかし、この宗教の故郷では…]
コルラしながら祈っていたのは、やはりチベットでの自由・平和・人権の回復だった。

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