アーグラー-3 ~アーグラー・フォート
2007年8月25日
タージを出たところで昼食時となった。近くの日本語メニューを出している料理屋に3人で入る。
メニューを見ると「焼肉定食」の文字がある。
「インドで『焼肉定食』って ―― 何の肉だろう」
3人ともそれを注文して、肉を食べてみる。
「牛肉…ですね」
まさかインドで牛肉にありつけるとは思わなかった。
ここはタージ・マハルに象徴されるようにイスラムの街。だからヒンドゥー教の戒律をものともしないのである。
アーグラー・フォート
ヤムナー川の上流には、アーグラー・フォートがある。赤い城壁が印象的な城砦で、これも、この街がムガル帝国の首都だった頃の名残りである。
ここの入場料も250Rs(ADAチケットはタージと通しで使用できる)。果たしてタージと同額の金を払うまでの価値はあるのだろうか。
「私たちは別に入場しなくてもいいです」
彼女たちも私も同じ気持ちだった。眼前にその城壁を見るだけでも当時のムガル朝の権勢を想像することができるのだから、それで十分だろう。
日帰りの予定で来ていた2人は、ここでアーグラー巡りを終わらせてオートリキシャで駅へと向かった。彼女たちを見送ったところで、別のリキシャワラーが声をかけてきた。
「タージまで10Rsで行ってやるよ」
10Rsなら安いものだと、私は一旦その話に乗りかけた。
「ほら、前に乗せた日本人もお礼を書き残してくれているよ」
得意気に手紙を見せてくる。インドではそうした他の観光客の手紙を見せることで「自分は信用できるよ」ということをアピールするケースがよくある。しかし今回は、彼にとってそれが裏目に出た。
手紙にはこう書いてあった。
「このリキシャに乗って土産物屋に連れて行かされた」
これもインドでよくある話で、リキシャワラーがつるんでいる土産物屋に観光客を連れて行って買い物を強要するという、観光客騙しの常套手段である。
危ないところだった。見知らぬ書き手の日本人のGood Jobに感謝しつつ、私は笑顔で彼に手紙を返すと、
「Good-bye !」
とタージの方向へと歩き出した。リキシャワラーは何が起きたのか理解できずパニックに陥っていた。
勢いでタージ-アーグラー・フォート間を行きも帰りも歩いてしまったが ―― どうも疲れ気味である。実はタージを巡っていた時からそれは感じ始めていた。
その時、医学を専攻しているトモコがこう言っていた。
「(予防接種の)抗体と白血球が闘っている最中かもしれませんね」
そうか。そう言えば数日前に予防接種を幾つも打ったばかりである。そのせいだろう ―― 多分。
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