カトマンズ・11 ~別れの晩餐
2007年7月30日
翌日にはカトマンズを去ることにしていた私は、チベット・ラサからの国境越えで行動を共にしたヨージ・ナナ夫妻とリョウコに声をかけ、カトマンズ最後の晩餐を共にした。
日本料理屋「ふる里」で料理を待ちながら談笑していたが、リョウコが心なしか元気が無い。
「実は、用事があってもうすぐ日本に戻らなければいけないんですけれど、何か今、テンションが下がってて ―― こんなテンションが低い状態で旅を終わらせてしまっていいのかなぁ」
確かに、いい気分のうちに旅を終わらせたい気持ちは分かる。しかし…
「でも、テンション低くなっているのは『このへんが潮時』っていうシグナルなのかもしれないよ」
全く慰めになっていないが、私自身の経験から来る言葉だった。私も以前、テンションが低くなりながら潮時を見誤ってずるずると旅を続け、暫くトラウマが残ってしまったことがあったのだ。
少し重くなった雰囲気の中、ヨージがぽつりと言った。
「(ネパール-日本の)往復チケット買ったら?」
その瞬間、リョウコの表情が変わった。
「そうか ―― その手がありましたね!」
そう。何も帰国イコール旅の終わりとは限らないのだ。旅の途中で日本という国に立ち寄ってまた旅を続けると考えればいいのである。
みるみるうちに表情を明るくしたリョウコは、あれやこれやと考え始めた。「テンション下がった」問題はこの時点で既に解決したようだった。
私がカトマンズを去った後、リョウコは本当に往復チケットを買い、一時帰国後9月後半、旅を再開した。
食事をしていると、ワタルとタカシ、そしてシュウとタカユキ(前日に再会したタカユキとは別人)と、ラサで一緒だった面々が続々と来る。シュウとタカアキはこの日がラサ以来となり、またしても嬉しいような間が悪いようなタイミングでの再会となった。
彼らがいたお陰で、ここまで来ることができたと思っている。いい出会いに恵まれたものだ。
こうして、カトマンズ最後の夜は実に賑やかに過ごすことができた。
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