カトマンズ・5 ~タメルの陽と陰
2007年7月24日
この日午前、サトコとフェイさんがナガルコットへと旅立って行った。
ナガルコットはカトマンズ東近郊にある高台の街で、天気がよければチョモランマ(エベレスト)を含めたヒマラヤ山脈を展望できるという。ただし、シーズンは秋・冬で今はオフに当たる。
[チョモランマ、か…]
ほんの4日前、チベット側で雲に阻まれてその雄姿を見ることができず涙を呑んだ世界最高峰である。ほんの数日であの雲が晴れてくれるとは思えないのだが、心が引かれた。
[天気が良くなったら、ナガルコットに行ってみるかな?]
そんな気持ちがわき起こったが、カトマンズでの天気はこれまでのところ、終始曇りか雨である。望みは薄そうだ。
そろそろ海外旅行保険の期限が気になってきた。3か月経過した8月初めで切れるのだが、それでは到底終わりそうにない。そこで実家と連絡を取ってインターネットで更に3か月の延長をしてもらった。この日インターネットでその契約を確認。私の旅は11月4日までとなった ―― この時点では。
この日は別れもあれば、再会もあった。チベット・ラサで交流のあった韓国人キム・ムンシクと宿の近くでばったりと出くわしたのだ。
ちょうど昼食にと思っていたところだったので、2人で近くにあったタカリ・バンチャというレストランに入った。このレストランのある建物の入り口には制服姿の門番がいて、普通の客に対してでもバチッと敬礼をしてくれる。
本格的ダルバート
ラサを出発してからのエピソードなどを語り合いながら、食したのはダルバート。2日前にネパール一食目として食べたものは余りに貧相だったが、今回のものは本格的。白飯もたっぷりとあり、付け合わせの種類も豊富でカレーも味の違うものが2碗出されて、おかずはお代わり自由である。3日目でようやく、本格ネパール料理らしいものにありつくことができた。
食事はうまいし、欲しいものは大抵手に入れることができるし、タメルは本当に居心地がいい。しかし、表に一歩出れば地元のやっかいな連中とのバトルも時として着いて回る。「リキシャ乗らない?」などは可愛い類である。物乞いもいるし、タメル・チョーク近くの通りにはストリート・チルドレンもいるが、それ程問題にはならない。
まずやっかいなのは、子供のミルクをせびってくる、身なりが良く貧しさの感じられない母親。無視して通り過ぎると舌打ちするような感じで罵ってきて、かなり不愉快だ。
しかし、一番たちが悪いのは、
「ハッパ?」
の連中だ。「ハッパ」というのはマリフアナの俗称である。
この後、ネパールのみならずインドで、東南アジアで、この言葉を何度もかけられたが、その類のものには全く興味がない、いやむしろ嫌悪していた私は、これを言われる度に殴り倒してやろうかという衝動に駆られた。買う馬鹿がいるから売る馬鹿が世にはばかるという図式ではあるが、違法なものを売りつけて懐を温めようとする性根は到底、容認できない。
夜には同じ宿にいた若い日本人たちと、やはりネパール料理であるタンドリーチキンを食べに行った。しかし、世代の違いなのか旅の背景の違いなのか、これまで行動を共にしてきた面々と比べ、まるっきり話が合わない。宿に戻ってからも暫くロビーで話が続いていたが、私は途中で抜けて、あとは部屋で独りで過ごした。
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