バス憧れの大地へ

世界への旅(旅行記)

アジア周遊第2部 チベット東南部、大陸中国西南部

昆明-1 ~中国圏外の地へ

2007年6月12日

朝、茶花飯店(通称カメリアホテル)のドミトリーの住人たちが次々と起床してロビーに集まってくる。
と、表に出ていたナツヨが戻ってきたが、何やら悔しそうな表情をしている。「どうした?」と声をかけられると、遂に泣き崩れてしまった。
自転車盗まれた…
何と、上海からずっと苦楽を共にし続けてきた"パートナー"とも言うべき自転車が無くなっているというのである。
話を聞いてみると、昨日自転車を停める際に扉のある専用駐輪場を開けてもらえず、別の場所に置かざるを得なかったという。それが災いして、盗まれやすくなってしまったようである。私たちは彼女を落ち着かせると同時に、ドミトリーのマスター(英語が堪能)にその旨を告げた。
少し気分が落ち着いたのか、ナツヨはパートナーとの思い出を語り始めた。
「とってもいい子だったんですよ。オンボロで、初めは敦煌(甘粛省)の砂漠に埋葬しようかと思っていたんですけど、だんだん元気になってきて…。パンクや故障をするのも必ず修理できる店のある所で…」
必死でふっ切ろうとする彼女の姿が、少々痛々しかった。
程なくして、ドミのマスターが管理責任者を連れてきて「私たちのホテルでこんなことが起きてしまって、本当に申し訳ありません」と、中国人としては珍しい慇懃な態度で(中国語ではなく英語だったからそう感じられたのかもしれないが)と謝罪の言葉を述べた。「保険に入っているのであれば盗難証明書をFAXで送りますよ」とまで言ってくれて、ナツヨの方が恐縮してしまった程である。残念な事件だったが、彼の丁寧な態度に少しだけ救われた感がある。
ナツヨはそれからすぐ、ベトナムを目指して出発したが、ベトナムの道を新しいパートナーと楽しく走行できることを心から願った。

その後は、昆明が2度目であることと生憎の雨天のため、特に何もせずダラダラと過ごす。

夕方、目的地は違うものの同じバスターミナルから同時刻のバスで出発するハジメとタクシーを相乗りしてバスターミナルに向かう。
道中の会話の中で、私が「どのくらい旅行するつもりですか?」と尋ねると、彼はさらりと「2年ぐらい」と言う。私も数か月かかる覚悟で旅に出ているが、それでも比べ物にならないほど長いスパンで各地を巡る旅人もいるものである。(しかしこの後、やはりその位のスパンを目指している旅人と数多く出会うことになり、やがてその程度では驚かないようになってしまう)

バスターミナルに到着し、それぞれのバスに乗る。つかの間のにぎやかな時間も終わり、ここからまた一人である。
20時、バスターミナルを出発。目指すは、中国圏外の土地だ。

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