黄山への道 ~ローカル列車の旅
2007年5月12日
早朝6時、福建省・武夷山から列車でまず江西省・鷹潭へと向かう。
9時半すぎ、鷹潭に到着。ここでは列車の乗り継ぎだけだったのだが、次の目的地・黄山へ直行する次の列車まで4時間と間があきすぎる。そこで10時23分の列車でまず、陶器の街として有名な景徳鎮に行き、景徳鎮からバスか何かで黄山へ向かうことにした。
しかし、いざ景徳鎮に着いてみると、黄山行きのバスが見つからない。仕方が無く、一番早く出発する列車に乗ることにしたが、これが各駅停車の超鈍行だった。買った切符には「無座」の文字が書かれていたので満席かと思いきや、乗ってみるとがら空きである。この列車は全て自由席で、だから座席の指定が無い、ということだった。
ローカル列車の硬座
ローカル線の駅
このローカル列車の旅が、なかなか面白かった。学生時代、青春18きっぷでゆったりと国内を旅行していた頃の旅の原点を思い起こさせられる。
古い型のオンボロ列車は、走っては止まり、止まっては走りを繰り返す。時には時刻表に書かれていない駅に、時にはプラットホームすら無い駅にも止まる。その度に、買い物を済ませて大きな荷物を抱えた人々、近所に移動する人々らが乗り降りする。この列車は彼ら地元民の“生活列車”なのだ。
駅のホームに向けてカメラを構えていると、子ども達が「写真撮ってるぞ!」と言ってレンズの向こう側に群がってきた。
ローカル列車の車窓からの風景
子どもたちは列車に乗り込んできて人懐っこく私に話しかけてくる。外国人と話をするということに対する興奮からか、やや早口になっている。こんな田舎になると、外国人を見るという経験そのものが希なのだろう。
列車は山あいに敷かれたレールの上を走っていく。車窓からは、武夷山から続いているかのような山の景色、そして田園の風景が見える。こうした風景にも、どこか懐かしさのようなものが感じられる。
省が江西から安徽へと変わり、景徳鎮を出発してから4時間少しで黄山駅(屯渓地区)に到着した。
宿は駅近くのユースホステルにする。同じドミトリーに、ハルさんという日本人男性がいた。今回の旅で初めて日本人と話をする。
彼は賃貸マンションのオーナーで、確定申告の時だけ日本に戻って後は海外をぶらぶらしているという、実に羨ましい身分の方だった。2日後に黄山に登る予定だという。
「明日はどうするんですか?」
翌日の予定が無いハルさんに尋ねられて、私は
「近くの古い町並みを見に行くつもりです」と答えた。ハルさんも興味を示し、明日は行動を共にすることになった。