永定-1 ~客家の生活感あふれる土楼
2007年5月9日
まだ空が明るくなり切らない早朝、列車が福建省・永定に到着した。
列車を降り、さて、目的地までどうやって行こうかと考えていたところに、旅行社のスタッフに声をかけられる。1泊の宿代と2日分の車代300元で案内してくれるという。中国で車をチャーターする相場を考えると、そんなに悪くはない。お世話になることにした。
出発は8時すぎに到着する福州からの列車が来た後ということで、それまで適当に時間を潰す。朝食に、里芋の澱粉で作ったもちの中に肉餡を入れた芋子板という郷土料理を頂いたが、塩胡椒が利いていてなかなかの味だった。
福州からの列車が到着したが、降りてきた乗客の中には同じ場所を目指す者がおらず、結局私1人で車を占有することになった。
振福楼
永定を有名にしているのは、永定土楼或いは客家土楼と呼ばれる不思議な建築物である。唐・元の時代に北方から移ってきて独特の文化を築いた漢民族集団・客家(ハッカ)の集合住宅だ。
最初に、南渓土楼群内にある振福楼を訪れた。
振福楼は典型的な円楼で、上から見るとドーナツ状の形をしている。ドーナツの身の部分のうち、一番外側は盗賊などの外敵から身を守るために強固な土壁になっており、その内側にへばり付くようにして部屋が設けられている。ドーナツの穴の部分は楼によって広場だったり廟が建てられていたりと異なっているが、振福楼の場合は廟が建てられていた。
振福楼は現在、住む人も無く住宅としては機能していない。その代わり、2階の部屋が博物館になっていて、永定土楼の歴史や造り方がよく分かる、予習にうってつけの場所だった。
それから、永定客家土楼民俗文化村に移動。言ってみれば土楼のテーマパークだが、古くから土楼が集まっていて実際に今でも客家が暮らしているエリアの入り口にチケット売り場を設置しただけのことである。
福裕楼
その中にある土楼の一つ・福裕楼に案内される。先ほど見た振福楼とは違い、鳳凰をかたどったという独特な形の五鳳楼だ。ドーナツ状になっておらず、中が3つほどの部分に仕切られているのが他の土楼と大きく異なっている。
福裕楼は私を案内してくれている林氏の住まいであると同時に、ゲストハウスとして利用されている。私の今晩の宿もここになった。
昼食に客家風炒め物を腹に収め、いざ土楼巡りに繰り出した。
まず、福裕楼から見て川の向こう岸にある如昇楼へ。直径20mにも満たない小さな円楼で、「最小の土楼」と呼ばれている。
最小の土楼・如昇楼
生活感あふれる如昇楼内部
中に入ってみると、3階に干されている洗濯物、1階で料理をする女性(土楼は大体1階部分が台所になっていて、2階以上が倉庫、居住スペースになっている)、子供をあやしつける若いお母さんなど、生活感あふれる風景があった。
景陽楼
その後、朝陽楼(円楼なのだが壁の一部が壊れてC字型になっている)、陽臨楼(方楼=上から見ると四角いドーナツ形)、景陽楼(方楼)などを見ながら道を進む。どの土楼も、ずっしりと重量感があり、ここに住む人々を守っているのだという頼もしさのようなものが感じられる。
そして、土楼の前に座り込んでおしゃべりをする女性たち、元気いっぱいに遊び回る子供たち、荷物を載せた天秤竿を担いで川を渡る老人、土楼の中庭で飼育されている鶏などの動物たち、煙突から流れ出る炊事の煙 ―― 目に入る光景全てが、山あいに住む客家たちの牧歌的で素朴な生活感を感じさせてくれる。