深圳-2 ~嫌な予感…
錦繍中華の次は世界之窓に向かう。
世界之窓は、中国版リトルワールドといった感じのテーマパークで、
“世界之窓”入り口
世界各国の吊所を時には原寸大で、時にはミニチュアで紹介している。入り口をくぐる前から、エッフェル塔が眼前に姿を見せて来訪客を出迎えている。
入場してしばらく歩くと「パスポートはいりませんか?」と売り子が声をかけてくる。見ると、まさしくパスポートといった外観の小冊子で、展示されている各国の簡紹がされている。 “VISA”のページに当たる所には、自分の好きな国のスタンプを押すことができる。 10元出して購入すると、売り子が尋ねてくる。
「どこの国のスタンプを押しますか? 日本?」
―― お分かりでしたか。
園内の展示は、ミニチュアのものが多かったが、中には原寸大とはいかないまでも、エッフェル塔や凱旋門、オランダの風車等、結構大きく再現されているものもあった。 インドのタージ・マハルやカンボジアのアンコール・ワットなど、私が中国以外で訪れたいと思っている場所のものはおおむね精巧に作られていた。
(上)小さめのタージ・マハル (下)これが富士山?
また、所によっては指定時間に見せ物を上演することもある。
私が見たのは、大雨で川が氾濫し、車が流される様子を再現するという、内容的には他愛のないもの。しかし、音響は結構迫力があったし、雨はアトラクションのエリア内のみならず、柵の外で見ている観客にまで容赦なく降り注がれてくる。作り物でどこまでリアリティーを出せるか ―― 主催者側もあの手この手だ。
そんな中にも、見ていて首をかしげさせられるものもやはりある。色のおかしなピラミッド、どう見てもハリボテのマンハッタン等々…。しかし、一番許せなかったのは、麓まで真っ白な富士山だ。
(富士山と言えば、頂は白、裾野は青でなければ!)
それに、富士山の側にそれより木が生えているのも許しがたい。思わぬところで、自分の日本人らしさを再発見してしまった。
それでも、先程の錦繍中華同様、「ミニチュアだから」と割り切って見ることができた分、楽しむことができた。下手に原寸大で造っている日本の同様のテーマパークより、余程面白かった気がする。
* * *
中心街に戻ろうと、バスに乗る。座席に座っていると、1人の男が私の隣に座ってきた。 その挙動に、私は何か嫌なものを感じた。私はとっさに、デイバッグを持つ手のガードを固め、男に見えないように財布を一番奥に移した。そうしているうちに、男はバスを下りて行った。
その後、近くにいた近くにいた別の男性が声をかけてきた。
「何かなくなっていないかい?」
「いや、何も」
「気をつけて。泥棒だよ」
やはりそうだった。この手の輩はそういう臭いを発するものである。 私が旅を続けてきて、これまで盗難等の災難に見舞われたことがなかった(列車の切符の紛失はあるが)のは、ガードを固くしていることが一番の理由なのだろうが、そうした臭いをかぎ付ける力も、いつの間にか加わっていたのだろうか。
深圳―香港を結ぶ羅湖駅
日帰りでの深圳訪問を終え、香港に戻るべく羅湖駅へ向かう。
羅湖のイミグレーションは、来た時以上にごった返していた。
現地の人は勿論、見た目ですぐに外国人と分かる者も多く、私もボーダーの橋を渡る際、現地の人と思われたのか、黒人男性に英語で道を尋ねられた。
国際都市・香港にリンクする街、中国に2つしかない証券取引所の1つがある街 ―― 深圳もまた、国際都市へと成長しつつある街である。
それにしても、本当に人が多い。 これが全部同じ列車に乗るのではないかと心配していたが、羅湖からの列車には2つの路線があり、私が乗った九龍行きの乗客はもう1つに比べて少なく、座って九龍まで戻ることができた。