ウルムチ-2 ~未知の世界から日常へ
2002年7月30日
早朝、車窓の外を眺める乗客たちが何か、ざわめいている。私もそちらに目を向けてみた。するとそこには、うっすらとした雪景色が広がっていではないか。
うっすらと雪に覆われた東トルキスタンの高原
ウルムチ、トルファン、カシュガルと東トルキスタンの都市を巡ってきたが、どこもTシャツ1枚で済むような所ばかりだった。東トルキスタンに雪、というのは似つかわしくない気もしたが、ここはそれらの地に比べて、高地にあるのだ。降雪があったとて、不思議はない。炎の山(火焔山)があれば、雪の山がある ―― それが東トルキスタンだ。
午後5時すぎ、5日ぶりのウルムチに到着した。異国情緒溢れる“未知の世界”から日常的(とは言っても私にとって海外であることには変わらないが)な街へと帰還したその瞬間は、あたかも夢から覚めたような心持だった。
ウルムチの後は飛行機で北京まで一気に飛ぶつもりだったので、リムジンバスの発着点である民航チケットオフィス近くに宿を取りたかった。しかし、最寄りの孔雀賓館には安い部屋が無く、宿は別に探すことにした。
宿は後にして、まず航空券を確保しておくことにしよう。チケットオフィスで3日後の北京行きの航空券を購入した。
さて、ホテルだが、8日前にも泊まったポゴダ賓館も歩いていける距離だったので行ってみたが、空きベッドが無かった。
他には、民航からは遠いものの新疆飯店にドミトリー(20元)があるという。少々不便だが、安かったのでそこに決めた。
19時(北京時間21時)を過ぎて、ようやくあたりが薄暗くなってきた。
「夜市に行きませんか?」
同じホテルに宿泊していた日本人たちが誘ってくる。ちょうど、このウルムチに面白そうな所はないものか、と思っていたところだ。私も行ってみることにした。
新疆飯店から少し歩いたところにある路地に入ると、スイカ、ハミ瓜、マンゴーなどがずらりと並んだ果物市がある。その先では、今度は衣料や日用品の屋台が並ぶ道を、カシュガルの日曜バザール並みの人出が埋め尽くしている。
屋台が立ち並ぶウルムチの夜市
さらに進むと、中国各地の名物料理(なぜか東トルキスタン料理は少なかった)を出してくれる屋台街がある。私たちはそのうちの一軒に腰を下ろして、夜食に舌鼓を打った。
「これから、国境を越えてパキスタンを目指すんですよ」などと、旅の会話が弾む。中央アジアや中東にまで話題が及ぶあたりが、東トルキスタンらしいところである。
腕時計の日付が変わったあたりで、減る様子のない人ごみを尻目に、私たちはホテルに戻った。うかつにも腕時計の時間を北京時間のままにしていたため実際には東トルキスタン時間の10時であって、現地市民の感覚ではまだ日は変わっていない。しかし、彼らの熱気が収まらないのは、そういう問題ではない気がする。彼らは、このウルムチの夜そのものを楽しんでいるのだ ―― と。
コメント(0)
コメントする