成都-1 ~チベットから中国へ
2001年8月7日
チベット・ラサからの約2時間のフライトを経て、飛行機は“下界”中国の成都に到着した。
ここが四川省か ―― 子供の頃からパンダ好きだった私にとっては、長年の憧れだった地だ。そして現在では、三国志ゆかりの地(私はアンチ蜀なのだが、やはり楽しみは楽しみだ)、そして、九寨溝・黄龍の自然の神秘をこの目で見たい、などといった楽しみも増えている。(※)
しかし、名所旧跡参観の前に、まずは宿に行くことだ。私はリムジンバスに乗り、外国人バックパッカーの溜まり場・交通飯店を目指した。
車内で、旅行社の服務員の女性が声をかけてきた。
「どこのホテルに行くんですか? 交通飯店?」
―― 身なりだけで、目指すホテルを一発で当てられてしまった。
彼女は私にツアー一覧のチラシをくれた。それによると、私が参加を考えていた九寨溝・黄龍ツアーは、900元ほどだ。事前に収集した情報に比べて、安めの料金設定だ。
(いろんな旅行社を回れば、もっと安い所があるかもしれないな)
私はそこでの即答は避けて、比較検討することにした。
交通飯店での私のねぐらは、定員6人の大部屋ドミトリー。日本人、西洋人、そして中国人もいて、非常に多国籍だ。ただし、男も女も関係無い。4人の男性、2人の女性が混在していた。
荷物を置いてしばらく休んだ後、早速ホテル1階にある交通旅行社に足を運んで、若い女性の服務員から九寨溝・黄龍ツアーの話を聞いた。彼女が言うには、3泊4日のツアーで820元。さっきの話よりも安い。
しかし、パンフレットには950元と書かれている。
「料金が違うけど、条件が違うの?」。私は中国語で尋ねた。すると彼女は
「ううん、今、ディスカウント!」と、日本語で元気に返してきた。
料金もさることながら、この小姐の人柄も気に入った。このまま申し込もうか、とも考えたが、前日申し込みでも参加可能だというし、やはり他の旅行社とも比較してみたい。私は再び、そこでの態度は保留することにした。
公園内の熱気は、夜になっても衰えない
表で夕食を終える頃には、辺りはかなり暗くなっていた。しかし、ホテル近くの川べりにある公園は、暗さなどお構いなしに賑やかだ。オープンカフェ風の茶館で人々が語り合い、露店が幾つも並び、パフォーマンスのようなものを人々が囲んで熱心に見ている。
暑い成都の街を、さらに熱気づかせている ―― そんな光景だった。
※九寨溝・黄龍、そしてパンダの古里は本来、中国ではなくチベットの版図だが、当時の私はそれを知らなかった。