旧九龍駅時計塔一帯、九龍城 ~「魔窟」の面影なし
2000年4月30日
まずは九龍城へ向かおうと、尖沙咀のバスターミナルへと向かう。
しかし、その一帯もなかなか面白そうだ。バスに乗り込むのは後回しにして、まずはそのあたりを散策することにした。
旧九龍駅時計塔
バスターミナルから旧九龍駅時計塔を左手に、ビクトリア湾を右手にプロムナード(遊歩道)が延びている。そこはちょっとした見晴台になっていて、観光客やカップルたちでにぎわっている。
そこからビクトリア湾の向こうに、香港島のビル群がずらりと見える。景色を遮るものは何もないので、上環から銅鑼湾に至るまで、「これぞ香港」という光景が、パノラマのように展開されている。
しかし、私が気になったのは、やはり雲行きだ。
中環の向こうには、ひときわ高いビクトリア・ピークが見えるはずなのだが、山頂はおろか、ふもとのビルのてっぺんにまで雲が垂れ込めている。
夜にはあの山の展望台から、噂の100万ドルの夜景を見る予定にしているのだが、大丈夫だろうか。
九龍側から見る中環のビル群に垂れ込める雲
ビクトリア湾の眺めを堪能した後、九龍城に向かう2階建てバスに乗り込んだ。
しかし、バスは最短距離を進まず、右に曲がり、左に曲がり、また左に、また右に、といった具合で、到着するのに結構時間がかかってしまった。
かつては「魔窟」と呼ばれた九龍城も、今では取り壊され、跡地に造られた九龍寨城公園は、市民の憩いの場となっている。そして、今この地に立っている”九龍城”は、きらびやかな内装のデパートだ。
治安や安全のことを考えれば、「魔窟」が消えたということは、もちろんいい事だ。
しかし、不謹慎かもしれないが、「つわものどもが夢の跡」のあまりの平和さに、少々拍子抜けしてしまった。
思えば、新空港の開港でなくなった啓徳(カイタック)空港も、この近くにあった。あの空港に離発着する飛行機が街のすぐ上空を飛ぶ光景同様、”香港らしい”光景が、次々と消えていっている。
しかし、これもまた「香港史」なのだろう。
市民の憩いの場・九龍寨城公園
現在の「九龍城」内部
公園を出ると、食堂街がにぎわいを見せている。今でこそ健康的で平和的な町並みだが、「魔窟」があったころは、もっと怪しげな雰囲気を醸し出していたに違いない。
食堂街を抜けて表通りに出ると、道路に挟まれた所にある広場が、何やらにぎわっている。
何をやっているのだろうと覗いてみると、急ごしらえの小さな舞台の上で、京劇を上演していた。
京劇というと、北京の前門飯店でお茶と菓子を味わいながらという、ちょっと贅沢なイメージが、私の頭の中にはあった。
街中の広場で上演されていた“草京劇”
しかしこの“草京劇”の光景は、京劇がやはり中国庶民の娯楽なのだ、ということを分からせてくれた。
一通り見たところで、次なる目的地・ビクトリア・ピークのある香港島を目指す。
九龍城の近くから香港島へ向かうフェリーが出ているというので、船着場を探すことにしたが、その船着場がどこにあるかが分からない。私が持ってきたガイドブックも、フェリー埠頭にあった観光案内所でもらった地図にも、この辺りの詳しい地図は載っていない。
しばらく歩き回ったが、結局、フェリーはあきらめて、地下鉄で行くことにした。
取りあえず地下鉄駅のある觀塘へ行くバスに乗り込んだが、しばらくすると途中で地下鉄の駅(九龍湾駅)が見えたので、そこで降りて地下鉄に乗り換えた。
余分な時間を食ってしまったが、今から行けば、ちょうど夜景の時間になりそうだ。
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