アレクサンドリア-1 ~眩しい地中海
1995年6月21日
エジプト2日目は、カイロを離れて車でアレクサンドリアを訪れる。昨日の旅行社の男のほか、彼の奥さんや娘、息子まで着いてきた。公私混同甚だしいが、お陰で道中が楽しくなったのも事実だ。
カイロを離れて暫くは、砂漠の中の道を進む。3時間ほど経ったところで、殺風景な車窓からの眺めが華やかな街へと変わっていく。
アレクサンドリアの教会
アレクサンドリアは、紀元前4世紀にこの地を支配したマケドニアのアレクサンドロス大王によって築かれた。都市の名前は言うまでもなく、彼に由来する。その後、プトレマイオス朝の首都になり、学問が栄えたアカデミックな古都でもある。
到着してまず訪れたのが、キリスト教会。名前は覚えていないのだが、割と規模が大きく、地下には墓場もある教会だった。モザイクの壁画も印象的である。
エジプトでは国民の9割がイスラム教徒だが、欧州に極めて近い地理条件、ローマ帝国の属領だったという歴史的背景もあって、キリスト教徒(コプト系)も少なくないのである。特にアレクサンドリアには総主教座が置かれ、古代キリスト教五本山の1つだったのだ。
信者たち、特に女性信者の服装も、イスラム教徒とは明らかに違う。体全体を隠すあのチャドルではなく、バンダナのようなものを頭に巻いている程度だ。中には前腕を露出させている女性もいる。
そう言えば、旅行社の男の奥さんと娘さんもチャドル姿ではなかった。尋ねて確認したわけではないのだが、この一家も恐らくキリスト教徒だったのだろう。
カイト・ベイ要塞
同要塞の周りには地中海が広がる
教会を出てまた少し車に揺られていると、海が見えてきた。地中海である。
その地中海にせり出すようにして、カイト・ベイ要塞が建っている。
要塞そのものは15世紀に造られたもので、それ程大したものでもないが、ここはそれ以前には"世界の七不思議"の一つに数えられるファロスの大灯台が建っていた場所で、その残骸を利用して建てられた建築物としてむしろ有名だ。ファロスの大灯台は高さ約130mで、56km先まで照らすことができる、当時としては極めて規模の大きい灯台だったという。地震という不可抗力で倒壊してしまったのが悔やまれる。(ちなみに、"世界の七不思議"で現存するのは、この前日に見たギザのピラミッドのみである)
要塞の側には海洋博物館があり、クジラの骨格など海洋動物のユニークな展示が行われている。こうした博物館も、海洋都市・アレクサンドリアならではだ。
あらためて地中海を望んでみる。青く、美しい海だ。
水平線の向こうには何も見えないが、日本でよく見てきた太平洋ほどの広さは無論ない。対岸の陸地 ―― ヨーロッパ ―― はそう遠くないはずだ。
対岸にこことはまた全く違った文化があると思うと、旅情は果てしなくかき立てられる。
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