杭州 ~西湖十景を遊ぶ
1991年3月31日-4月1日
南京大学学生寮で同室になったもう一人の日本人から、「杭州の後、上海へ行くのなら、列車は上海を経由してしまうので、バスの方がいい」とのアドバイスがあったので、杭州へはバスで向かった。
西湖の景観
西湖十景の一つ「花港観魚」
浙江省の省会・杭州は、湖の街。
市の真ん中にある西湖の景色が、素晴らしい。
あのマルコ・ポーロが、「世界で最も美しい街」と絶賛した街だ。
湖畔のホテル・湖浜飯店に荷物を置き、2日間かけてじっくりと、西湖を散策する。
確かに、どこから見ても美しい。
岳廟
湖と海との違いはあるが、京都の天の橋立を思わせる雰囲気があった。
湖全体もいい眺めだが、各ポイントごとにある「西湖十景」も、それぞれ趣の違った自然美を見せてくれる。長江上流域の三峡に「小三峡」と呼ばれる名所があるが、西湖十景も「小西湖」と言っていいかもしれない。
途中、岳廟という所があった。
杭州はかつて、漢民族の宋王朝が、北方異民族の金王朝に押されて南に逃れた際、都となった街である。
その時、金と断固戦うべし、と主張した岳飛をまつったのが、この岳廟だ。
彼は中国史において、悲劇のヒーロー的存在である。
岳飛の像の側に、その政敵で和平(屈服)論者であり、岳飛を失脚させた秦檜の、縄でくくられた像が置いてある。看板には「たんを吐きつけるべからず」と書いてあり、頭をピシャリと叩いて行く中国人観光客もいる。
漢民族は無意味にプライドが高いのたが、それを初めて垣間見た光景だった。
1日目の夕食で、この地方の名物・東坡肉(豚の角煮)を食べた。腹の調子も回復しつつあり、おいしく食べることが出来た。
紹興 ~魯迅ゆかりの地でドタバタ
1991年4月2日
杭州から日帰りで、紹興に出掛けた。
紹興はもちろん、紹興酒の街であり、文豪・魯迅が生まれた地でもある。
杭州のバスターミナルから乗り込んだバスが止まり、乗客がぞろぞろ降りる。私もそれにつられてバスを降りた。
しかし、バスは残り少しの客を乗せて、走り去って行った。
魯迅ゆかりの咸亨酒店
魯迅故居
[しまった、途中の停留所だった!]
道路の掲示を見ると、紹興まではあと10km。 時間はかかるが、歩いて行けない距離ではない。(当時の私はマラソンランナーだった)私は広大な農地を横目に、時々走りながら路肩を歩いて行った。
これもまた、悪くはない。
1時間半ほど歩いて、紹興に到着。市内巡りはレンタサイクルで繰り出した。
文豪を生んだ街は、落ち着いた雰囲気の田舎町だった。
魯迅故居はもちろんのこと、彼の小説「孔一巳」の中に登場する咸亨酒店も、この街の名所だ。ここでで本場の紹興酒を、ということも考えたが、自転車に乗っていたし、時間も無かったので、やめておいた。
翌日が日曜日ということで、銀行で両替をしていたら、またしても余分な時間を費やしてしまった。駅に着いたころには、帰りの列車の予定時間を過ぎていた。
私は焦って、駅員に
「この切符の列車は、もう出たのか?」と聞いた。
すると駅員は、ずらりと並んだ人の列を指差して「ここに並べ」と言う。
何のことはない。“中国時間”で、列車は遅れて到着していたのだった。
普段はこうした列車の遅れにイライラしていた私だが、この時ばかりはそれに助けられた思いがした。
それにしても、ドタバタとした1日だった。
いよいよ、次は上海だ。
旅の終わりも、近い。