バス憧れの大地へ

富士山

富士登山記 プリンスルート登山(2024年8月)

富士宮登山口―宝永山

2024年8月2日

ここ数年で、8月の第1金~土曜日は私にとってすっかり富士登山の日となってしまっていた。登りを平日に当てることで混雑を回避できるし、あとこれは偶然ではあるのだが、不思議と天気に恵まれるのである。
ということで、今年も8月の第1金曜日のこの日、富士登山に出掛けることにした。
JR東海道線で静岡・三島駅まで行って、そこからバスで2時間かけて富士宮登山口へ向かう。
しかし道中、天気は明らかに「晴れ」なのに、富士山は殆ど全く見えない。すっぽりと雲に覆われているのである。山道を高度を上げながら進むバスは遂に、その雲の中に突入する。
五合目に着いてみたら山頂がすっきりと見えていることを期待する気持ち半分、今回は雨中の登山を覚悟する気持ち半分で到着を待つ。
11時50分頃、5合目の登山口に到着。休憩所横の階段を上がって富士山を眺めると、右3分の1は晴れた空の下に姿を顕わにしていたが、左3分の2は、やはり雲の中だった。
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富士宮登山口にて、右3分の1だけ姿を見せた富士山
最後の準備と昼食を済ませて、登山口へ――ここで、昨年までとは1つ違う手間があった。
富士山のオーバーツーリズムが問題となってきていた2024年、山梨側の吉田登山口では、それまで任意で徴収していた保全協力金1000円とは別に2000円の入山料を必須とし、更にゲートを設け、16時以降はゲートを閉ざして宿の予約が無ければ先に行くことを認めない、軽装の登山者には注意を促すという、弾丸登山や山を舐めた馬鹿者を抑止する施策が始まった。
諸々の事情でそこまで足並みを揃えられなかった静岡側も、予定や山小屋の予約状況などの情報を含んだ事前の届け出制を導入し、事前の届け出の無かった来訪者には現地で登山の心得を説くVTR(富士山を知る者にとっては当たり前の内容ばかり)を見てもらって届け出をしてもらってからようやく登山口へ入ることを認める、という新方式をスタートさせていた。
事前に情報を得ていた(富士登山を目指す者なら当たり前)私は既に届け出を済ませていたので、スマートフォンに表示させたバーコードを提示して手続き完了。その証であるリストバンドを着けさせて頂く。 写真
手続き完了の証しであるリストバンド
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いざ出陣
任意とはなっているが世界遺産・富士山を登らせて頂くのだから自分の中では「義務」になっている保全協力金1000円も支払い、全ての準備完了。12時30分、いざ、ことしも富士登山をスタートさせる。

この登山口から登ると毎回、ペースを掴めずにハイペースになってしまい六合目までの登りで息を切らしてしまうので、まず呼吸だけ気を付けてゆったりめのペースで登り始める。それでも六合目まではコースタイム20分となっているところを、16分程度で走破することができた。
富士宮ルートはこの六合目の山小屋を超えたところで左折――なのだが、私はそこから直進するコースを下って行った。せっかく五合目から110m上がってきたのに、また60mほど高度を下げる。
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富士宮ルートはここの分岐を左だが、私は宝永山を目指し直進
下った先にあったのは、宝永火口。1707年(宝永4年)に発生した「宝永大噴火」の余りに荒々しい爪痕である。
私が今回挑んだのは、プリンスルート(当時皇太子だった徳仁親王殿下=今上天皇=が2008年に辿ったルートのためこの名がついた)だ。このルートは富士宮登山口をスタートしてこの宝永火口内にできた登山道を登り、火口と御殿場ルートの山麓の間にできた尾根上にある宝永山の馬の背・山頂に至り、そこから一旦御殿場ルートの下山道を少しだけ登った後、間をトラバースして御殿場ルート登山道に至り、そこから先は御殿場ルートで山頂を目指す、というものである。
プリンスルートは既に2019年にも登っているが、その時は下りに吉田ルートを選んだため、まだこのルートを下ったことは無い。今回は登りも下りもプリンスルートを辿ろうという計画だ。 写真
宝永火口。この中を通る登山道(写真右側の線)がプリンスルートだ
宝永火口の入り口に到達。しかし肝心の「お鉢」は雲に覆われて何も見えない。急ぐ必要は何も無いので少しばかり待ってみると、見る間に雲は四散して巨大な「お鉢」が姿を現す――しかし、すぐにまた右手から雲が流れ込んでくる、ということを暫く繰り返していた。
いざ、火口跡の中へ。暫く下っていくと「プリンスベンチ」と呼ばれる休憩所に行き着く。ここかプリンスルートのスタート地点と言える場所だ。この時もお鉢の中は雲に包まれていたので、コースを示すロープを張るための杭を頼りにルートを歩き始める。しかし、歩いているうちに雲は風に散らされて、荒々しい火口跡が顕わになった。
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宝永火口の中の登山路
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宝永火口内コースの路面は細かい砂礫で滑りやすい
宝永火口の底から上までは高低差が300m近くある上に折り返しが2~3回しかないことから傾斜が急で、しかも目の細かい砂礫地なので、登るに当たっては非常に滑りやすい。しかし、前回登った時にコツは掴んでいた。前に出した足を、上から踏み下ろすのではなく、足の裏を水平にして爪先を斜めの地面に突き刺して足場を踏み固めるというものだ。
「ここから富士山が火を、溶岩を噴いたのか...」という大自然の猛威を実感しつつ一歩一歩前へ進み、「プリンスベンチ」から50分ほどで、尾根になっている「馬の背」に取り付くことができた。 写真
宝永山山頂
宝永火口が正面から見える静岡側や横から見える山梨の山中湖方面などの方向から富士山を望むと、その宝永火口の南端が尖っていることに気づくだろう。これが宝永山であり、その頂(海抜2693m)まで行ってみると、宝永火口のほか、尾根の逆側には御殿場ルートのある山麓を見ることができる。天気が良ければ静岡側の街や伊豆半島、駿河湾、相模湾の大パノラマを望むこともできるだろうが、残念ながらこの時は雲に阻まれて見ることができなかった。

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