馬返―4合目
2021年8月5日
午前11時20分、1合目発となる吉田口登山道を辿る富士登山開始。
出発地点となる馬返(標高1,450m)はその名が示す通り、「ここから先は馬では登れません。徒歩で登って下さい」という地点だ。
馬返
なだらかな坂を3分ほど歩くと、狛犬ならぬ狛猿を従えた1合目の鳥居をくぐる。ここからが本格的な登山道だ。
1合目の鳥居
1合目の鈴原神社
鳥居から6分ほどで、木造の古い建物が見えてきた。1合目の鈴原神社だ。しかし、社の入り口は固く閉ざされている。かつての登山道が寂れてしまったことの象徴とも言えるだろう。
ただ、この建物はまだ往時の姿をよく留めている方だ。ここから先に見る建物は「廃墟」というしかない建物が多くなってくる。
1合目から25分ほどで、11時50分、2合目(標高1,700m)に到着。ここに建てられていたのは旧御室浅間神社だが、鳥居に隣接する木造の社は半壊しており、修復しようという気配も見当たらない。
2合目の旧御室浅間神社
御室浅間橋
2合目から程なくして、御室浅間橋を渡る。かつてはこの下を沢が流れていたのだろうが、今は涸れ沢となっている。
そして、この橋を渡ったあたりから、等高線の間隔がやや狭まり始める――即ち、傾斜が急になり始める。
細尾野林道の分岐
暫く登山道を登ると、林道に行き着いた。
この林道(細尾野林道)を下った先には、富士山遥拝所女人天上という場所があるそうだ。今でこそ富士山は老若男女問わず登山を認められているが、富士登山が信仰の行為であった時代において、富士山は女人禁制だったのだ。その時代に女性が富士山を望むことを認められたポイントが、その場所だったとのことである。
今回のコースとは外れるし、男性である私には必要ない場所に思われたので立ち寄ることはしなかったが、これも富士登山の歴史の一つと、興味は引かれた。
更に傾斜がきつくなった山道を歩いて、12時10分、3合目(標高1,840m)に到着。
ここにはかつて見晴茶屋があり、登山者たちをもてなしていたらしい。しかし、残っていたのはやはり廃墟だけだった。撤去もされずに壊れるままに放置されているということが、この登山道の衰退ぶりを表しているが、昨今は登山やトレイルランなどでここを通る人も増えつつあるようなのだから、せめて見すぼらしい姿だけは晒さないようにできないものか。
3合目の見晴茶屋
3合目からの見晴らし
ここまでのところ、登山道はずっと左右を木々に覆われて見晴らしは全く楽しめていなかったが、さすがは「見晴」の言葉を冠した茶屋。ここでは展望が開けた場所があり、河口湖や富士吉田の街並を眼下にすっきりと望むことができた。
3合目から20分ほどで、4合目(標高1,990m)。ここも展望が開けていて、河口湖から青木ヶ原樹海にかけての眺望を楽しむことができる。
4合目・大黒天の石の祭壇
ここはかつて大黒天像を祀った茶屋「大黒茶屋」があった場所で、傍らにはその名残りか、石の祭壇のようなものがあって、日本各地の寺社の木札や賽銭が供えられていた。
衰退著しいこの登山道で、ようやく今に残る富士山信仰を垣間見ることができた――このささやかな祭壇は、吉田口登山道の希望の星のようにも思われた。
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