御殿場ルート七合九勺―富士山頂
2019年7月13日
8時30分、御殿場ルート七合九勺の(海抜3300m)赤岩八合館を出発。八合目(海抜3400m)には8時53分に到着したが、「八合」の名を冠した山小屋からの高低差は実に100mにもなった。
御殿場ルート八合目の山小屋跡
ここには「見晴館」という山小屋があったが、今では営業されておらず、完全にがれきに埋もれていて「山小屋跡」と化している。
宝永山が見える下界を望むと、先ほど休憩をとった七合四勺のわらじ館が遥か下に見える。この間、標高差250mを1時間(休憩時間除く)、つまり標高差100mを24分ほどかけるペースで歩いてきたが、ここから御殿場ルート山頂の鳥居まではあと標高差320mほど。単純に換算すれば1時間16分ほどで到着できる計算だ。
八合目から下界を望む
山小屋跡を過ぎて道が上を向いたところで、ふと上の方に目をやると、山の斜面に残雪が見える。夏の富士登山シーズンに入ったとはいえ、富士宮・御殿場ルートの山開きからまだ3日目なのである。気温は前にも書いた通り、標高が100m高くなれば0.6度低くなっているはずだが、午前中で太陽が空気を温めてくれた分相殺されているのか、寒さはそんなに気にならなかった。
斜面に残雪が見える
漢詩「富士山」の石碑
そして、道端に石碑が立っているのが見えた。刻まれている文字を見ると、鎌倉~室町期の大智禅師という僧侶が書いた「富士山」という漢詩だった。そして、この地で遭難した2人の若者の名前――そう。これは慰霊碑なのである。
登山は危険を伴うアクティブティだ。勿論、それは承知の上で、しかし遭難しないように細心の注意を払ってチャレンジしている訳だが、こうしてそういうことが実際にあるのだということをあらためて知らされると、身も心も引き締まる。
慰霊碑あるあたりは陰に隠れてその先のコースが見えなかったのだが、次のカーブでコースを隠していた岩を超えると、そこに見えたのは幾重にも折れ曲がったコースが上まで続いている光景だった。
上へ行けば行くほどきつくなるのが富士登山。ここからがいよいよ正念場だ
御殿場ルート八合目以降の山道(上から撮影)
まず、空気が明らかに薄くなってきた。ちょっと歩いただけで呼吸が苦しくなる。気がつけば、10秒歩いては10秒休んで、というくらいに足を止めて休む頻度が高くなってきた。
そして、もう一つ――今までの富士登山で経験したことの無かった難敵が顔を見せた。風である。
今まで苦しめられた記憶が無いのが奇跡とも言える厄介者だ。時折、体感で風速10m近くあるのではないかと思える強い風が吹き付けてくる。こうなってくると、片足を上げるとバランスを崩して滑落しかねない。両手に持ったストックを地面に強く押さえつけ、その場でじっとしてやり過ごすより他にない。幸い、そんなに長くは続かない風だったので、様子を見ながら慎重に歩みを進めていった。
息が上がったら立ち止まり、回復したらまた歩き出し、風が吹いたら立ち止まり、止んだらまた歩き出し、を繰り返す。また、この区間は登り・下り共に使われるので、すれ違う時には、登り優先とはいえ状況によっては立ち止まる必要も出てくる。
「こんにちは」
すれ違う時は挨拶をするのが登山のマナーだ。
「こんにちは。あと少しですよ!」
下ってきた年配女性のペアにかけられたその言葉に、力がわいてきた。
山頂の鳥居が見えてきた
それから程なくして、9時52分、岩陰に隠れてなかなか見えてこなかった山頂の鳥居がすぐ近くに見えてきた。まさに、あと少しだ。
そして、9時53分...
登 頂 !
御殿場ルート登頂
4年連続4度目の登頂達成。だんだん登頂の感動は薄くなってきているが、それでも何度登っても登頂達成は嬉しいものだ。
七合九勺から頂上までのコースタームが1時間30分のところを1時間22分で歩き切った。そして、標高100mごとの平均ペースは19分30秒――何度も立ち止まりながら登った割には、先ほど計算した七合四勺~八合目間でかかった24分というペースよりもむしろ速くなっていた。
プリンスルート全体で言うと、休憩時間を含めて5時間38分、休憩時間を除くと4時間28分かかった。標準コースタイムが6時間というので、今回もコースタイムを遥かに上回るペースで登ることができた。
(ちなみに当人には急いで登ったつもりは毛頭ない。むしろ、体と相談しながらマイペースでゆったりと登ったつもりだ)
ここで一休みしてもよかったが、もう少し歩いた先にある、富士宮ルート頂上の頂上富士館前の方が休み易いので、もう少し頑張ってそこまで歩いてから休むことにした。
頂上富士館に着いてみると、五合目の宿で一緒だった方々を含む大勢の登頂者が休憩していた。私もその一角で腰を下ろし、補助食を食べてエネルギーを充填する。
30分ほど休憩し、10時36分、再度歩き出す。
登頂したとは言っても、登山全体で言えばまだ折り返し地点にも達していないのである。
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