須走登山口
2016年7月21日
朝4時半、起床。5時すぎに家を出て、やや小雨模様の中、歩いて川崎駅へ。5時39分発の東海道線下り列車に乗り込む。
しかし、駅のホームに到着した時点で、嫌なアナウンスが流れていた。
「東海道線は、大雨の影響で、小田原―熱海間で運転を見合わせています。次の沼津行きも、行先を小田原に変更しての運行となります」
おいおい...
幸い、私は小田原より手前の国府津で東海道線を下りて、取りあえず運行は止まっていない様子の御殿場線に乗り換える予定なので、目的地に着けなくなる恐れは無い。
しかし、私にとって気がかりなのは、列車の運行よりも天気そのものだった。
私は今、初めての富士登山に挑むべく山麓の街へと向かっているのだ。
主催者の方からは「登山できない天候にはならないと思われるので、決行します」とのメールが来ていたので、恐らく登れないことはないのだろう。しかし、できることならより良いコンディションの下で登りたいものだ。
車窓から祈るような気持ちで外の天気を眺めていたが、降っていると思えば小止みになり、小止みになったかと思えばまた降り始める。どうやら、余り良いコンディションは望めそうにない様子だ。
乗り換え駅の国府津が次の駅となったところで、ザックを網棚から下ろす。と、近くの席に座っていた、同じようにザック持参の親子連れも下車の準備を始めている。
「富士山ですか?」
「はい」
親子連れの子供は、まだ小学校3、4年生ぐらいの男の子だった。この小さな体だと過酷な登山になるかもしれないが、いい思い出になるし、登頂できればクラスメートに自慢できることだろう。
国府津駅で御殿場線に乗り換え。
「おはようございます」
車内に見覚えのある顔ぶれがいたので、合流。見覚えがあるとは言ってもきちんと話をしたことは無かったので、簡単に自己紹介。いずれの方々も私より年上。私とて人生の折り返し地点を過ぎたぐらいの年齢だが、登山の世界には年配の方が多く、私の年齢でもまだまだ若輩だ。
更に松田駅で、主催者の小林さんを含む、新宿から小田急線で向かっていた数名と合流。車内で登山計画書などが配られる。これから富士登山に挑むのだ、という実感がいよいよリアルになってくる。
7時23分、御殿場駅に到着。雨足は取りあえず弱まってくれたが、地面はしっかりと濡れている。今後の天気も予断を許さない。
ここで、前日に御殿場入りを済ませていたメンバーと合流。富士急行のバスに乗って須走口五合目を目指す。
バスは暫く御殿場市街地を走った後、富士山のちょうど真東あたりからつづら折りの山道を上っていく。
車窓の外は鬱蒼とした森林になっていた。「山」の感覚がますますリアルになってくる。しかし、天気が良ければそこに見えるはずの富士山は、残念ながら雲の向こうだ。
「こんなものを持ってきました。よかったら試してみて下さい」
バスの中で、小林さんがそう言って銀色の小さな袋を手渡してくれた。パッケージを見ると
「チベット族の酸素補給
紅雪冬夏」
と書かれている。
「高山病対策の薬です。1日2回、2錠ずつのんで下さい」
成分表を見ると、「紅景天、雪蓮花、冬虫夏草、田七、枸杞子(クコの実)、澱粉」と、チベットで有名な薬草の名前がずらりと並んでいる。中でも紅景天は、以前チベットに行った時にも、高山病予防薬として購入して服用した経験がある、親しみのある名前だ。かの有名な冬虫夏草も入っているからか、少々値段は張るらしい。
そう。私たちはこれから、日常とは別世界の高地に挑もうとしているのだ――そんなことを再認識しつつ、ありがたくこの貴重な薬を早速服用させていただいた。
8時35分、須走口五合目に到着。
須走口五合目
しかし、御殿場駅で辛うじて止んでくれていた雨は、バスに乗っている間に再び強まってしまっていた。
この天気では早速、雨対策フル装備で臨まなければなるまい。私たちは山荘・菊屋のスペースをお借りして、ザックカバー、レインウェア上下、ロングスパッツ等を装着。
山荘・菊屋
山荘・菊屋内部
今回歩く「須走ルート」は、↑こんな感じ。静岡側からアタックするルートだ。スタート地点の須走口は標高1970mで、須走口頂上(3710m)との標高差は約1740mある。登山客は少なめだが、8合目からは一番混む吉田ルートと合流する。
準備ができたところで、9時20分、輪になって自己紹介と準備体操をする。
9時40分。ゆったりと歩き始める。入り口の小屋で「富士山保全協力金」1000円を支払う。
「富士山保全協力金」徴収の小屋
その先に見える階段が、富士山頂への第一歩。いよいよ富士登山のスタートだ。
ここから富士登山が始まった
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